研究実績の概要 |
線虫C. elegansの飼育温度依存的な低温への耐性変化、温度馴化を制御する神経回路ネットワークの解析を進めている。すでに、温度馴化に関わる頭部の温度受容ニューロン(ASJ)と、その下流で尾部にある介在ニューロンPVQを経由し、さらに頭部の介在ニューロンRMGに至る、全身を周回する神経回路が温度馴化シグナル伝達経路の一つであることが、当研究室の解析によって示されている。 昨年度は、上記の神経回路上で機能する神経伝達物質の同定のために、FMRF-amide様タンパク質をコードするflp遺伝子、neuropeptide-like proteinをコードするnlp遺伝子とその受容体npr遺伝子のいくつかの変異体を用いて低温馴化の表現型を調べ、複数のflpおよびnlp遺伝子が温度馴化に関わることが示唆された。そのうちのいくつかは、ASJ, PVQ, RMGでの発現が報告されているものもあるため、温度馴化においてこれらの神経細胞で機能する神経伝達分子の同定が期待される。これまでに、温度馴化に関わる温度受容ニューロンとしてASJ, ADL, ASGが同定されており、昨年度は、それぞれの細胞の活性に必要なチャネル等を欠損した変異体を用いてPVQのCa2+イメージング解析が進んでいる。今後近いうちにPVQに正あるいは負のシグナルを伝達する上流の受容ニューロンが同定されれば、さらに詳細な神経回路モデルを構築できると考えている。PVQに接続している新たな温度応答の神経回路も同定した、具体的にはASG感覚ニューロンとその下流のAINとAVJ介在ニューロンの回路である。
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