本研究は、ウシの繁殖技術向上を念頭に、黄体形成ホルモン(Luteinizing Hormone; LH)の一過性の血液への放出が排卵を誘起する現象に着目して、簡便にホルモン検出するために、ウシの尿中および乳汁中の黄体形成ホルモンを定量し、動態を把握することを目的とした。これまでに、黒毛和種牛において、ホルモン剤により排卵を誘発すると、約2時間後にLHの一過性の血液への放出が起き、その約3時間後に尿中でもLHが増加すること、また48時間後までに排卵することを明らかにした。交尾排卵動物であるネコでも、発情期に血中LH濃度を測定したところ、血中LHが増加することが分かったが、尿中LHに関しては検出できる個体とできない個体がいた。血中と尿中LHが同じ濃度で検出されるヒトに比べると、ウシとネコの尿中LH濃度は血中LH濃度に比べ著しく低く、さらに個体差が大きいことがわかった。 三年目は、牛乳中にLHが排泄されるかどうか検証するために、牛乳中LHを測定した。予備試験で、血中LHの増加を認めた乳牛の牛乳からLHを検出することができなかったため、尿中LH濃度と同様に、牛乳中LH濃度も血中LH濃度に比べて低いことが予想された。そこで尿中LHと同等のLHを検出できるか、牛乳にLH標品を添加して検証した。しかし牛乳中の脂質やタンパク質が阻害し、LHを測定できなかった。そこで乳脂質とタンパク質を除去する目的で、凝乳酵素レンネットを添加し得られた乳清を用いた。乳清にLH標品を添加したところ、ほぼ正確に添加量を測定することができた。
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