研究課題/領域番号 |
19J40094
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
古板 恭子 大阪大学, 蛋白質研究所, 特別研究員(RPD)
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研究期間 (年度) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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キーワード | 溶液NMR / タンパク質 / フロリゲン / 立体構造 / 機械学習 |
研究実績の概要 |
溶液NMR法は、生体内に近い溶液中でのタンパク質・核酸の立体構造決定が可能であるという優れた特徴があるが、分子量が2万以上では解析が難しくなる。本研究では、サンプル調製およびNMRデータ取得法を工夫し、機械学習を利用したNMRスペクトル解析システムを利用することで、高分子量タンパク質の迅速な立体構造決定を可能とする解析法の確立を目指している。さらに、開発する解析法とX線/中性子小角散乱を組み合わせることで、「フロリゲン」、「フロリゲン受容体」、「転写因子」からなる分子量およそ11万の「フロリゲン複合体」の立体構造決定を目指す。本年度は以下のことを実施した。 (1)「フロリゲン」のNMR構造解析 本年度は「フロリゲン複合体」構成因子のうち、「フロリゲン」のNMR解析を実施した。13C,15N 均一標識したサンプルを調製し、化学シフトの帰属及び構造計算のための一連のスペクトルを測定した。取得したスペクトルを用い、全自動NMR構造解析システムであるMagRO-FLYAを用いた化学シフトの帰属及び構造決定を試みた。しかしながら、ある程度の化学シフトの帰属は達成されたものの、まともに折りたたまれた立体構造は得られなかった。原因としては、分子量が2万とやや大きいこと、部分的に構造多形があり、化学シフトが2系あるためにスペクトルが複雑化していることなどが考えられた。 (2) NMRスペクトル解析システムの利用法の検討 MagRO-FLYAを用いた立体構造決定がうまくいく条件を探るため、他のタンパク質を用い、利用方法の検討を行った。構造決定プロトコルを変えてMagRO-FLYAを用いた立体構造決定を行い、得られた構造のRDCのデータを用いて評価し、最適な構造決定プロトコルを検討した。その結果、完全自動構造決定のためには測定やデータ処理の工夫により、高分解能スペクトルを得ることが重要と考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
「フロリゲン」が構造多形を有していたり、「フロリゲン受容体」は50% H2標識を施しても側鎖のNMR信号が乏しいなど、ターゲットとしているタンパク質の性質により解析が予想より困難だったため。
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今後の研究の推進方策 |
今後は高分子量タンパク質の解析に適したNMR測定、解析法の開発を進め、引き続き「フロリゲン複合体」の解析に取り組むと共に、手法評価のためのモデル系として他のタンパク質の利用も考える。
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