研究課題
2020年度は、高分子量タンパク質の測定に適した13C核観測測定の高感度化法を開発した。具体的には、データ取得方法を工夫することで、13C核観測測定の高感度化を目指した。通常の2次元NMR測定では1回のスキャンで1回データ取得を行うが、このときデータの半分が観測されずに捨てられている。1H核観測測定ではsensitivity-enhancement法と呼ばれる、通常捨てられる成分をデータとして取得する方法があるが、13C核観測測定ではsensitivity-enhancement法に相当する感度向上法が存在していなかった。本研究では、1回のスキャンに2回のデータ取得を行うことで、通常捨てられるデータを取得して利用することに成功した。この方法を用いてアミノ酸およびタンパク質の測定をしたところ、通常の測定と比較してアミノ酸では2倍、タンパク質では1.8倍のピーク強度の増大見られ、世界で初めて13C観測の高感度化を達成した。この成果はJ. Magn. Reson誌に論文として発表した。また、分子量がおよそ1.3万と2万の2種類のタンパク質について全自動構造解析システムを用いた解析を実施した。分子量1.3万のタンパク質については、完全自動でよく収束した構造が決定できた。一方、分子量2万のタンパク質では、13C-edited NOESYスペクトルにおいて機械学習を利用したノイズフィルターがうまく機能しなかった。これはスペクトルのシグナルノイズ比が悪いためにピークの形状が悪く、ピークとノイズの識別が難しいことが原因だと考えられた。タンパク質が高分子量になるほど良質なスペクトルを得ることが難しいため、高分子量タンパク質の自動構造決定には自動ピーク検出の改良が今後の課題だと考えられた。
3: やや遅れている
2020年度は13C直接観測の高感度化を達成し、また自動構造解析システムの利用法についての検討を進め、ある程度の成果を得たものの、フロリゲン複合体の解析は進展していないため。
今後は全自動NMR構造解析システムを用いたフロリゲンの立体構造解析を進めるとともに、フロリゲン変異体の溶液NMRによる解析を通してフロリゲンの花成制御機構の解明を目指す。
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Journal of Magnetic Resonance
巻: 322 ページ: 106878~106878
10.1016/j.jmr.2020.106878