研究課題/領域番号 |
19J40100
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
香月 雅子 東京大学, 大学院農学生命科学研究科, 特別研究員(RPD)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 誇張形質 / 付属肢 / 性選択 / 性的二型 / RNAi |
研究実績の概要 |
本年度の計画は①モモブトハムシでの比較トランスクリプトーム解析、②候補遺伝子群を対象としたモモブトとテナガへの RNAi 法実施、発現抑制された遺伝子の各部位の形態形成へ与える影響を形態計測とSEMによる観察から定量化であった。 ①ついて、共同研究者と共に、比較トランスクリプトーム解析を進めている。また、解析に加え、遺伝子発現動態を調べるだけでなく、ゲノム情報も得るために、GridIONを用いたライブラリー作成とシーケンス解析を行っている。② 付属肢形成に関わる遺伝子や誇張化に関与するとされる遺伝子を対象とし、RNAi法を実施した。各脚のRNAiのよる効果を調べるため、脚形質のサイズの定量化を行った。それぞれのサンプル数が少ないため、サンプル数の追加を現在行っている。また、対象とするインスリン様ペプチドに関する遺伝子は、対象となる配列が短く、dsRNAの合成がうまくいかないものがあったため、脚のみから抽出したRNAから得られた遺伝子発現情報からではなく、全身から抽出したRNA由来の遺伝子発現情報から他の目的遺伝子の配列情報を得るため、現在解析を進めている。SEMによる形態観察については、対象の処理区が多いため、観察対象を絞っている段階である。新型コロナウイルスにより休職期間が生じたため、学会での成果発表にデータが間に合わなかったが、来年度の学会で発表を行う予定である。実験個体採集は、一部の採集地の破壊と新型コロナウイルスによる緊急事態宣言によって、困難かと思われたが、対策を十分に講じた上での採集と、新たな採集地の確立によって、来年度も実験を行うには十分な個体を得ることができた。 以上に加え、新たな共同研究者を迎え入れることにより、付属肢の接着力の測定方法が確立されつつある。これにより今後、RNAiによる特定遺伝子の微細構造への影響の定量化が期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画通り順調に比較トランスクリプトーム解析を進めている。また、解析に加え、遺伝子発現動態を調べるだけでなく、ゲノム情報も得るために、GridIONを用いたライブラリー作成とシーケンス解析を行うことができている。 付属肢形成に関わる遺伝子や誇張化に関与するとされる遺伝子を対象とし、RNAi法を実施することができており、定量化も可能であることが明確となった。この結果の一部から、新たな研究課題も見つかり、更なる研究の発展が期待できる。さらに、新たな共同研究者を迎え入れることにより、付属肢の接着力の測定方法が確立されつつある。これにより今後、RNAiによる特定遺伝子の微細構造への影響の定量化が期待できる。 対象とするインスリン様ペプチドに関する遺伝子は、対象となる配列が短く、dsRNAの合成がうまくいかないものがあったため、脚のみから抽出したRNAから得られた遺伝子発現情報からではなく、全身から抽出したRNA由来の遺伝子発現情報から他の目的遺伝子の配列情報を得るため、現在解析を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度に引き続き、比較トランスクリプトーム解析と新たに得たゲノム情報の解析を進める。また、全身由来RNAのRNAseqから、追加でのインスリン様ペプチドに関する遺伝子を引っ張ってきてRNAiを行う。 テナガとモモブトのオス誇張形質において共通する遺伝子発現の動態を調べる。モモブトとテナガにおいて、誇張形質、支持形質の形態やサイズに影響を与える遺伝子を RNAi によって発現を抑制し、交尾行動や闘争の結果への影響をコントロールとの比較により明らかにする。 これまでの研究成果についてデータを精査し、学会での発表を行う。前年度同様実験個体採集を行う。 分子実験・室内での個体飼育には、子どもの体調による不測の事態にも対応できるよう、実験補助のアルバイトを雇い研究を 進められる体制をとる。
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