研究課題/領域番号 |
19J40192
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研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
飯田 奈美子 立教大学, 異文化コミュニケーション学部, 特別研究員(RPD)
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研究期間 (年度) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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キーワード | 通訳倫理 / 通訳規範 / 通訳の逸脱行為 / 母子保健通訳 / 会話分析 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、母子保健場面における通訳を介したコミュニケーションの中で、通訳倫理や通訳規範からの逸脱行為に着目して、会話分析法にて分析をおこない、通訳者によるコミュニケーション介入行為がどのような相互行為によって引き起されているかを明らかにするものである。本研究では実際の母子保健場面(助産師外来)にて、言語による相違があるかを調べるため、ポルトガル語通訳、中国語通訳の2言語において、調査対象は在住外国人の多い地域の産婦人科(有床診療所)大学病院にて行う。通訳者の介入行為は通訳倫理や通訳規範からの逸脱行為と表裏一体であり、介入行為と逸脱行為の相違点が明確にされていない。そこで、実際の通訳場面を録画録音し、通訳者がどのように通訳をし、どのように通訳倫理や通訳規範からの逸脱行為を行っているかを分析することで、通訳者の介入・逸脱行為を特定し、その生起する要因を解明していく。この研究目的を達成するために、初年度は調査対象病院にて予備調査(参与観察、インタビュー)、本調査(通訳場面の録音録画)を行い、特に予備調査でえられた結果を5つの学会にて発表することができた。予備調査では、病院勤務の通訳者の役割や通訳行為以外の通訳者の行為を分析し、多様な通訳者の行為が通訳実践中の相互行為の中でどのような意義がでてくるかを考察した。また、本調査でえられたデータのテープ起こしも行うことができ、本調査分析への準備を整えることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
調査対象病院にて、新規採録の調査を行うことができた。予備調査は通訳者や医療従事者のインタビュー、参与観察を行い、当該病院の通訳状況の把握を行った。本調査は助産師外来にてポルトガル語通訳を介した助産師(日本語)と患者(ポルトガル語)の会話を録音録画した。会話分析法に基づいた詳細なテープ起こしを行い、分析に必要なトランスクリプトの作成を行うことができた。まずは、分析枠組みの通訳者の介入に関わる考察をコミュニティ通訳の国際学会「Critical Link」にて発表し国内外の通訳研究者から様々な意見をもらうことができた。さらに、予備調査でおこなったインタビューや参与観察データの分析を行い、その考察を日本保健医療社会学会大会、日本通訳翻訳学会大会、日本質的心理学会にて発表し論文化に向けての有意義な議論ができた。さらに、社会言語科学会では、先行研究のデータを用いて、論文の核となるテーマについての発表を行い、専門領域の研究者から今後の研究の方向性になるアドバイスをもらえた。これらの研究発表にて、研究の方向性を確実に定めることができ、研究データを論文化し発表をすすめていく。以上から、おおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策としては、まず、2019年度で学会発表した内容を論文化していくことを重点的に行っていく。さらに、録音録画した助産師外来での通訳を介した助産師と妊婦・家族の会話のトランスクリプトを作成し、会話分析研究者とデータセッションを行い、会話分析に必要な知見やアドバイスをもらい、データの分析をすすめていく。特に、実際の相互行為において通訳者の通訳行為、または通訳以外の行為がどのように作用し、実際の会話及び通訳実践に影響を及ぼしているかを考察する。そして、この分析結果の学会発表と論文執筆を行っていく。また、新型コロナウィルス感染拡大の緩和傾向が見られれば、調査対象病院にて調査の継続を申し入れデータ収集を行っていく。
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