研究課題/領域番号 |
19J40197
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研究機関 | 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター |
研究代表者 |
丹羽 まどか 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 精神保健研究所 行動医学研究部, 特別研究員(RPD)
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研究期間 (年度) |
2019-07-01 – 2022-03-31
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キーワード | 複雑性心的外傷後ストレス障害(CPTSD) / 認知行動療法 / STAIR/NST / STAIR Narrative Therapy / 治療プロセス / 多施設共同研究 |
研究実績の概要 |
複雑性心的外傷後ストレス障害(複雑性PTSD)は、国際疾病分類の第11回改訂版(ICD-11)において新たに採用されたが、PTSDの中核症状である再体験症状や回避症状、過覚醒症状に加えて、感情調整や対人関係の問題、否定的な自己概念を伴う病態である。こうした病態は従来から指摘されており、主に虐待サバイバーを対象としてSTAIR/NST(Skills Training in Affective and Interpersonal Regulation / Narrative Story Telling)という治療法が米国で開発・検証されてきた。 本課題では、挑戦的萌芽研究(課題番号16K13502)で進めてきた臨床研究を継続・発展させ、日本各地の医療機関と協働した多施設共同研究を行う。これにより、複雑性PTSDに対する認知行動療法STAIR/NSTの介入効果について、一般化可能性を高めた形で検証するとともに、治療プロセスの詳細な検証や治療ノウハウのまとめを行うことを目的とする。 2019年度には、当該治療の研修を受けた治療者が所属する施設を共同研究機関として登録し、4施設にて組み入れと治療介入を実施した。共同研究機関の治療者とは定期的にWEBミーティングを行い、症状評価や介入の共通基準の精緻化、治療の進捗状況の共有、臨床試験実施上の課題への対応を行ってきた。加えて、治療ノウハウの蓄積や、治療プロセスの詳細な検討、トラウマの内容や精神症状等の特徴による治療上の課題や対応方法についての情報集積に取り組んできた。介入症例については、治療プロセスの詳細な検討を行い、治療経過とスーパービジョンの内容について、症例検討会で発表と議論を行った。また所属機関内での勉強会、トラウマ臨床に関わる医師や心理士を対象にした研修会などを通して、複雑性PTSDの診断や当該治療法についての情報発信を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究実施計画では、共同研究施設での実施準備、施設間での定期的に検討会により症状評価の共通基準を精緻化すること、共同研究施設での治療研究開始、プロトコル論文の投稿、を予定していた。本年度は上記の計画に則り、共同研究施設での組み入れと介入を進めており、概ね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今後も臨床試験の登録、介入、評価を進めていく。2020年度の目標症例数を8例とする。治療介入と並行して、治療担当者や主治医が有害事象の評価を行い、安全性を継続的にモニターする。また継続的に共同研究者との研究ミーティングを行い、臨床試験実施上の課題に対応する。治療介入のクオリティコントロールのため、被験者の同意のもと米国のSTAIR/NSTスーパーバイザーによる遠隔スーパービジョンを受ける。加えて、治療プロセスの詳細な検証を行い、事例論文ないしケースシリーズ論文を作成する予定である。
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