本年度は、これまでの理論研究と経験的研究の統合を目指し、「現代日本の文化資本と社会空間」という本研究課題について総合的に取り組んだ。理論研究の成果は、『教育社会学研究』に掲載された「ブルデュー派階級分析の理論と方法」にまとめた。この論稿では、ブルデューの「社会空間」と「文化資本」という理論的概念が経験的研究にどのように結びついているのかを論じた。この理論研究と並行して、前年度までには進められていなかった音楽空間に関する分析を行い、その成果の一部を日本社会学会の大会で発表した。音楽の趣味や関与は、社会階層(学歴・所得・職業など)に還元できないことが分かったが、どのような属性や社会的要因が重要になっているのかは今後の検討課題である。音楽空間に関する研究成果は、2021年度内には論文として公刊することはできなかったが、研究の進捗とともに課題をより明確にすることができた。また、音楽空間の分析には新たな理論枠組みが要請されるため、拙稿「ブルデュー派階級分析の理論と方法」で扱った理論的考察にとどまらず、理論研究をさらに進める必要がある。
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