研究課題/領域番号 |
19J40214
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研究機関 | 国立研究開発法人海洋研究開発機構 |
研究代表者 |
伊規須 素子 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 超先鋭研究開発部門・超先鋭研究プログラム, 特別研究員(RPD)
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研究期間 (年度) |
2020-01-06 – 2023-03-31
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キーワード | 有機質微化石 / 顕微赤外分光法 / 顕微ラマン分光法 / 先カンブリア時代 |
研究実績の概要 |
本研究では、形態的特徴と化学的特徴を合わせることで、先カンブリア時代微化石の起源生物に制約を与える新しい指標を得ることを目指す。 南中国・三峡地域から産出した約5.8億年前の有機質微化石について、顕微ラマン分光分析、顕微赤外分光分析を行い、結果をとりまとめ、国際学術誌に投稿し、査読結果を受け、改訂の後、掲載された。 ラマン分光分析から、アクリターク・束状フィラメント・不定形炭質物の熟成度が異なることが明らかになった。アクリターク一個体中では、異なる部位(内膜・外膜・内部塊状構造)の間で熟成度に違いは見られなかった。赤外マッピング分析から、アクリターク一個体中で各部位に特徴的な官能基を検出した。アクリタークは化学的には4種類の内膜構造を有する:(1)主に芳香族C-H結合から成るもの、(2) 主に脂肪族C-H結合から成るもの、(3)芳香族C-H結合・脂肪族C-H結合に乏しいもの、(4) 芳香族C-H結合・脂肪族C-H結合が混在するもの。すべてのアクリタークにおいて、外膜は芳香族C-H結合に富む。これらの特徴はアクリタークが真核生物のシスト起源であることを支持する。しかし、原生生物のシストか動物のシストか決定することはできなかった。束状フィラメントは芳香族C-H結合に富むが、その起源物質は不明である。不定形炭質物は、ラマン分光分析から見積もった熟成度および赤外分光分析から特定した官能基構造に広いバリエーションを示し、不均質であることから、様々な前駆物質由来と考えられる。これらの結果は、当時多様な微生物が存在したことを示唆する。有機質微化石一個体中の官能基の空間分布を明らかにすることは、起源不明の微化石の分類に重要な手掛かりを与えうる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定していた研究計画は実施できたので、おおむね順調に進展していると評価する。
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今後の研究の推進方策 |
走査型透過X線顕微鏡-軟X線吸収端近傍構造(STXM-XANES)分光分析のために、FIB-SEMを用い、有機質微化石を含む岩石薄片から厚さ100nm程度の切片を作成し、STXM-XANES分析を実施する。
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