研究課題/領域番号 |
19J40218
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
河野 七瀬 京都大学, 地球環境学堂, 特別研究員(RPD)
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研究期間 (年度) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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キーワード | HOxサイクル / HOxラジカル / 化学反応 / 大気化学 |
研究実績の概要 |
昨年度までに,装置の改良を行うことで検出セル部分に大過剰のO2を添加することが可能となり,様々なRO2ラジカルをOHラジカルに変換する効率を劇的に向上させることに成功した。その結果,これまで困難であった多重結合をもたない短い炭素鎖をもつ揮発性有機化合物(VOC)由来のRO2ラジカルの検出が可能となった。さらに,上記の装置を用いてメタン由来のRO2ラジカルとNO2の反応速度定数を決定し,これまでの報告値と比較することで装置性能を評価した。RO2ラジカルの濃度変化を十分に高い分解能で観測することが可能であることが実証されたため,本年度はさらにエタン由来のRO2ラジカルとNO2との反応速度定数,また,その逆反応の速度定数を大気圧・室温条件下で初めて決定した。さらに,HOxラジカルの反応経路分岐比(サイクルの回転に寄与する経路と離脱する経路)を算出するため,様々なRO2ラジカルのエアロゾル表面における不均一反応による取り込み速度を測定した。エアロゾルは室内によりアトマイザーを用いて生成した。その結果,RO2ラジカルの大きさにより取り込み速度が変化する様子を観測することに成功した。これまで,RO2ラジカルのエアロゾルによるサイクルからの離脱経路はシミュレーションモデル等にほとんど考慮されていなかった。そのため,本研究によるRO2ラジカルの取り込み過程の実証実験はHOxサイクルの定量的な評価やより正確なモデル計算の構築に大きく寄与する成果となったと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
現在までの研究により,これまで困難であった炭素鎖の短いRO2ラジカルを大気圧・室温条件下で検出することが可能となった。本成果は,HOxサイクルの定量的な評価を行う上で,非常に大きな進展である。また,本装置を用いて,メタンとエタン由来のRO2ラジカルとNO2の反応速度定数を決定し,反応速度論に関する海外誌に投稿済みである。さらに,HOxサイクルからの離脱経路として着目されているエアロゾル表面における不均一反応に関しても,HO2およびRO2の両ペルオキシラジカルに対して評価することに成功しており,選択的検出およびサイクルの定量的評価手法の開発に対する途中経過として十分に進展していると考えた。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの成果を利用し,最終年度はより実大気におけるサイクルの評価を行うため,実大気をサンプルガスとして反応セルに添加し,ペルオキシラジカルのサイクルに寄与する過程とサイクルから離脱する経路の分岐比,また,OHラジカルからペルオキシラジカルを生成する反応経路分岐比を決定する予定である。そのためには,HO2ラジカルとRO2ラジカルの検出効率を正確に把握する必要がある。そこで,OH + CO, CH4, C3H6反応から生成するそれぞれHO2ラジカルと2種類のRO2ラジカルの検出効率を室内実験により確認する。
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