研究実績の概要 |
昨年度までに,本研究の目的であるHOxサイクル中のRO2ラジカルを生成する経路と直接HO2ラジカルを生成する経路の選択的な検出を室内実験により行ってきた。そこで,最終年度には,実際の外気をサンプルとした観測実験に拡張し,HOxサイクル中の反応経路分岐比を決定することを試みた。まず,HOxサイクルの開始剤であるOHラジカルを重水素置換し,反応セル中で外気と反応させた。その結果,多くのODラジカルは反応により消失し,ODラジカル由来のレーザー誘起蛍光(LIF)強度は急激に減少した。ここで,十分量のNOを検出部位に添加すると,ODラジカルと外気との反応で生成したRO2, DO2, HO2ラジカルがNOおよび外気中のO2との反応により再びODおよびOHラジカルを生成し,それらのLIF強度が増加する様子を観測した。NO添加による各ラジカルLIF強度変化の解析結果,および,同時に測定したOHラジカルの消失速度,NOx, CO, O3等の微量物質濃度から,HOxサイクル中の反応経路収率を算出することに成功した。その結果,測定した微量物質濃度から予測した収率よりも,RO2生成経路の収率は高く,非同定・未検出の物質とOHラジカルが反応して,RO2ラジカルを生成している可能性を示唆する結果となった。また,RO2ラジカルを生成する経路の中でも,不飽和炭化水素と反応してRO2を生成した経路,また,飽和炭化水素との反応でRO2を生成した経路の収率も,最終生成物であるOHおよびODラジカルの強度比から算出した。
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