本年度は当初の予定通りヨウ素含有化合物の分解菌の探索を実施し、対象化合物に「ヨードベンゼン」と「ビスフェノールA」を選びその分解菌の取得に取り組んだ。その結果ヨードベンゼン分解菌(耐性菌)候補として12株取得したが、ビスフェノールAについては単離はできなかった。単離したヨードベンゼン耐性菌候補12株のDNAを取得後、16S rRNAのDNA配列解析を実施した。その結果単離した株はいくつか重複しており、Bacillus属細菌およびその近縁種の3種であった。Bacillus属はグラム陽性菌で芽胞を形成しストレス(薬剤、有機溶剤)に強い菌として多くの報告がある菌のため、ヨードベンゼンの毒性にも耐性を有する可能性が考えられた。 次に前年度までの実験結果から、ヨウ素含有廃水が活性汚泥微生物群に大きな影響を与えることや、その結果として特徴的な微生物集団が活性汚泥内に形成されることがわかっている。また分子状ヨウ素は強い酸化力で細菌等を殺菌する作用をもつ。そこで一般の都市下水を処理する活性汚泥に対して、ヨウ素毒性を示す「ヨウ素溶液」を添加し、活性汚泥中の微生物群がどのような影響を受けるのかについて解析を行った。またヨウ素溶液の他に「ヨウ素カリウム(KI)」、「ヨードベンゼン」、「フェノール」も添加試薬として用いた。都市下水処理用の活性汚泥に上記のヨウ素関連試薬等を添加し、25℃で振盪培養を行い、培養2日後と7日後の汚泥サンプルを回収後、各サンプルの菌叢構造解析を実施した。その結果特に「ヨウ素溶液」を添加した活性汚泥では、培養期間中に大きく菌叢が変化した。初期の一時的なヨウ素の殺菌作用により2日後のサンプルの菌叢には、既報の抗菌物質に対して耐性を示す複数の細菌が優占化するという特徴が見られた。またその後培養が進むにつれて菌叢が変化し、7日後にはそれぞれ異なる細菌が優占化することがわかった。
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