現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当該年度は、これまでに作成した候補遺伝子の機能欠損変異体に対して、機能解析を行ってきた。特に、OsRLK1,OsRLK4,OsRLK7に対して菌根菌の胞子を接種したところ、樹枝状体の形成が野生型と同様に起こることが示された。このことから、OsRLK1,OsRLK4,OsRLK7が単独で菌根菌共生に関わっている可能性は低いことが示された。また、候補遺伝子であるOsNFR5-2に関しても、osnfr5-2単独変異体や、osnfr5-2;osnfr5二重欠損変異体を用いて、同様の菌根菌共生の表現型解析を進めている。これらの結果に関しては、第63回日本植物生理学会年会(オンライン)にて発表を行った。 また、本年度特に注目して行ったのが、他の植物の知見から、OsCERK1と共に共生応答に関わる可能性のあるOsSYMRKというLRRモチーフを持つ受容体型キナーゼである。昨年度までにossymrk変異体の作出は完了しており、本年度は、ossymrk変異体の表現型解析や、OsSYMRKとOsCERK1との結合解析などを行った。また、ossymrk変異体のCa2+スパイキング解析に関しては、関西学院大学の武田直也博士と共同研究を行い、応答評価が完了した。これまでの解析からは興味深い結果が得られており、論文を執筆しており来年度中の投稿を予定している。本年度得たデータは、菌根菌共生の開始のメカニズムにおいて非常に重要な知見となりうるものであり、今後さらに発展していく可能性を持っていることから当初の予想以上に進展していると位置付けた。今後、OsCERK1が共生応答と防御応答という対照的な2つの応答のうち適した応答を起動するメカニズムについて、さらにその詳細を明らかにしていきたいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題は、OsCERK1がどのように菌根菌共生応答と防御応答を切り替えているのかについて、そのメカニズムを明らかにすることを目的としている。現在いくつかの候補遺伝子に関して解析を進めているが、これまでの解析から、OsRLK1,OsRLK4,OsRLK7の3つの候補遺伝子に関しては、少なくとも単独で機能している可能性は低いという結論を得ている。そのことから、今後はOsRLK1,4,7,の解析よりも、OsNFR5-2、およびOsSYMRKの解析に注力していきたいと考えている。また、OsRLK1,4,7に関しては、これまでの結果を論文にまとめ、来年度中に投稿を予定している。 研究は概ね当初予定した通り進んでおり、来年度は候補機能欠損変異体に対して防御応答の指標であるROS応答解析などの解析を予定している。また、CO-IP法を用いた結合解析等に関しては、現在最終調整を行っており、これらの結果が得られ次第論文を投稿する予定である。また、来年度は特に、表現型が出た候補遺伝子群に関する詳細解析を、国際学会にて発表する予定である。 これらに加え、当初予定していた菌根菌共生のシグナル分子であると考えられている4量体キチンに対する網羅的発現解析に関しては、表現型が出た候補受容体欠損変異体を用いて比較解析を行う予定である。4量体キチンに加え、防御応答を誘導する7量体キチンに対しても、同様に網羅的な発現解析を行う。これらの解析を通して、菌根菌共生の開始のメカニズムの詳細と、共生応答と防御応答の切り替え機構について、その詳細を明らかにしていきたい。
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