Ewing肉腫は約90%にEWS/FLI1を中心とした融合遺伝子を持つ骨軟部腫瘍で、転移性タイプでは極めて予後不良であり新規治療法開発が望まれている。ネオアンチゲンは正常細胞には存在しない遺伝子変異から翻訳された腫瘍特異的な抗原である。 ネオアンチゲンはに対する細胞傷害性T細胞(CTL)療法が新規免疫療法として注目されている。EWS/FLI1融合遺伝子はその融合部でアミノ酸変異しており、ネオアンチゲンとして良いターゲットとなる。しかし、患者由来CTLは慢性的な抗原暴露によるT細胞の疲弊が問題となる。この問題を解決するため2013年、疲弊した抗原特異的CTLからiPS細胞を樹立し、CTLに再分化誘導することでCTLを機能的に若返えらせる技術が開発された。この技術を応用し、Ewing肉腫に対して、ネオアンチゲンであるEWS/FLI1を標的とするiPS細胞由来CTL療法という新しい着目点から新規治療の開発を目指す。 今年度、in vivo試験を繰り返し行い、Ewing肉腫のゼノグラフトマウスをiPS細胞由来EWS/FLI1特異的CTL投与群、末梢血由来EWS/FLI1CTL投与群、無治療群に分け、治療群には週に1回、3回投与を行った。iPS細胞由来EWS/FLI1特異的CTL投与群は腫瘍増殖を抑制し、生存を延長した。また、iPS細胞由来EWS/FLI1特異的CTLの細胞表面マーカー解析も繰り返し、iPS細胞由来EWS/FLI1特異的CTLがより若いメモリーフェノタイプ分画にあり、自己複製能を有することを示した。さらに、疲弊マーカー解析を行い、iPS細胞由来EWS/FLI1特異的CTLが末梢血由来CTLと比較して疲弊度が低いという結果を得ることができた。これらの結果から、Ewing肉腫に対してiPS細胞由来EWS/FLI1得意的CTLが新規治療として有用である可能性を示した。
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