研究課題/領域番号 |
19K00002
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研究機関 | 宇都宮大学 |
研究代表者 |
山田 有希子 宇都宮大学, 教育学部, 准教授 (90344910)
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研究分担者 |
吉良 貴之 宇都宮共和大学, シティライフ学部, 講師 (50710919)
高橋 信行 國學院大學, 法学部, 教授 (70407170)
村上 恵理 独立行政法人国立病院機構栃木医療センター(臨床研究部), NHO栃木医療センター, 放射線科医長 (90743112)
千嶋 巌 独立行政法人国立病院機構栃木医療センター(臨床研究部), NHO栃木医療センター, 内科医師 (20842842)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ケア / スピリチュアル・ケア / 痛み / 哲学 / 倫理学 / 医療 / 医療ケア / ACP |
研究実績の概要 |
本研究では、終末期医療に取り組む「医療ケア者へのケア」を学際協働的に考えることを目標としている。中長期的には患者一人一人の全人的ケアおよび家族の支援を展望するが、そのためにこそ、まずはもっとも患者の身近に寄り添う看護師をはじめとして「ケアする者」へのケアを目指す。とくに患者が抱える「4つの痛み(ペイン)」とそれに対応した「4つのケア」に着目し、終末期ケアの意味を、哲学・法学・医学・倫理学の見地から学際的に探究する。
当該年度の成果は主に以下の5点である。 1)緩和ケアに携わる医療ケア者との医療倫理勉強会(全8回)を実施し、終末期医療ケアにおける症例検討や医療倫理問題を考えた。2)若年層を対象とした死生学教育、ACPのあり方を考えるとりくみを実施した。①大学生を対象とし、ACPのあり方や患者の「痛み」の意味を考える「死生学教育」の試みを医師と協同で実施した(2回)。②小5~中3生を対象とした「生老病死」に関する「死生学教育」の試みを医師と協同で実施した(夏休み親子講座)。3)スピリチュアル・ケアの専門家を招いた講演会「講師 岡田圭先生 「いのちを活かす終末期の哲学的意識」」を企画実施した。(於:宇都宮大学。大学生・一般市民向け、2019年12月)を行った。4)本研究メンバーを含め、医療者および哲学・思想・歴史・教育学の専門家からなる「とちぎ死生学研究会」を発足し、隔月で研究会を実施した。5)病院外からも「医療」のあり方を考える「社会的処方」に関する特別レクチャー(理論編・実践編)を講師を招いて実施した(2020年1月、2回実施)。6)医療ケア者を対象とするインタヴュー調査を実施し、終末期医療における具体的諸問題の調査・検討を行った。 今後も、1)理論と実践の架橋を目指し、また2)学際的な方法で推進したい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
・新型コロナウイルス感染症拡大にともない、医療者を対象としたインタヴュー調査・アンケート調査を十分に行うことができなかったが、初年度としては全体としておおむね順調に進展している(具体的な進捗状況については「概要」箇所を参照)
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今後の研究の推進方策 |
引き続き今後の研究においても、1)理論と実践の架橋を目指し、また2)学際的な方法で推進したい。具体的には下記の点を促進することをめざす。 ①医療ケア者へのアンケート・インタビュー調査の実施と充実:2019年度に十分に実施できなかった分を、オンライン対応等で工夫し、実施する。また、新型コロナウイルス問題に関連し、医療ケア者のかかえる新しいさまざまな問題が生じていることを背景に、新型コロナ問題に特化した医療ケア問題を整理、検討していきたい。②法学・倫理学関連の文献研究の推進:「ケア」に関する哲学的文献研究をすすめる(理論研究)とともに、スピリチュアル・ケアとACPを基軸に、終末期医療における法・倫理的な具体的諸問題を整理し、検討する(実践研究)。③「とちぎ死生学研究会」の発展:学際的協同性をより高めるため、2019年度に本研究会を母体に発足した「とちぎ死生学研究会」をより発展・充実させる。研究成果は、研究会内部にとどめることなく、地域・一般市民に還元することを目指す。④医療ケア者との医療倫理勉強会を充実させる:新型コロナウイルス問題で休会せざるをえなかった本勉強会を再開し、医療現場の具体的諸問題を哲学的、法学的観点から整理し、解決策を考えることを引き続きめざす。2020年度以降は、新型コロナ問題に対応した医療ケア問題、および、具体的な症例研究を充実させていきたい。 ⑤若年層(大学生・小中高校生)を対象とした「死生学教育」の試みを充実させる:これまでとかくタブー視されがちだった<身近な人の死、あるいは、最期の生>について、新型コロナ問題をきっかけに、多くの人が意識せざるをえない状況が続いてきた。そうした背景から、ACPの適切な普及や発展の方向を考えるために、withコロナの時代における死生学教育、医療ケアのあり方を考える。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス問題によりインタビュー調査が実施できなかった分の予算が余る。次年度以降は、実施方法を工夫し、計画通りにすすめたい。
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