研究課題/領域番号 |
19K00004
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
檜垣 立哉 大阪大学, 人間科学研究科, 教授 (70242071)
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研究分担者 |
久保 明教 一橋大学, 大学院社会学研究科, 准教授 (00723868)
近藤 和敬 鹿児島大学, 法文教育学域法文学系, 准教授 (90608572)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 人類学理論 / 現代フランス哲学 / レヴィ=ストロース / ブリュノ・ラトゥール / STS |
研究実績の概要 |
哲学と人類学の交錯を目標とした本科研は、本年度においては哲学者4人と人類学社会学側で6、7名の研究者によっ手、本科研を一つのベースとして共同著作を作成するということとそて、本年度の研究はほとんどが、その発表および質疑応答、最終的に刊行されるべき原稿の執筆およびそのやりとり、相互的な疑問の提出と下記直しなど研究会の開催についやされた。なお、本科研は本園度が最終年限であったが、もともと海外発表を予定していた予算などがコロナウイルスによる諸状況に選ってほとんど執行ができず、また研究者相互の連携も対面ではまだ憚られる時期が多かったため、予算的にすべてを使い切れないため、来年度に繰り越し、これをもって書籍出版のための版下代にあて、本年度はZoomなどを介した上記の研究の遂行にほぼすべての研究を割くことにした。 人類学は、レヴィ=ストロース以降の世代である、デスコラやケック、あるいはブラジルのヴィヴェイロス・デ・カストロなどが提示するさまざまな議論が問題になるなかで、英米ではこれと類似しながらも、直接的な交錯はなく、ストラザーンやワグナーなどの議論が進展している。科研費を元とした出版物のための研究会においてはこうした人類学理論の問題を、哲学の側からどのようにあつかい得るのかを、レヴィ=ストロースや20世紀の社会学的状況によるコンテクスト化を企てるとともに、人類学の側としてはこうした哲学の理論を受けて、現代的な科学人類学(ラトゥールなど)をも引きうけつつ、どう応じれるのかが大きな問題として浮き上がっていった。年度内にそれぞれの論者の原稿が書き上がり、次年度に残りの予算で、本科研の研究代表者および分担者を中心に、勁草書房から成果報告書を兼ねた書物が出版される予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本科研研究としては最終年の予定であり、当初は今年ですべての研究を終えるつもりであったが、そもそも新型コロナウイルスにおける環境の激変により、予定されていた海外での学会発表や、国内での対面での研究会などは、そのすべてがキャンセルもしくは遠隔にならざるをえないという状況のもとにあった。そのため、今年度は腰を落ち着けて、本科研の代表者および分担者が連関する人類学や社会学の研究者と連携をすることによって、それぞれの立場から本主題に適合した、哲学思想と人類学の交錯に関する発表をおこなってもらい、それを成果出版とすべく、相互に批判検討し、それぞれが論文化するという作業をおこなうことにした。もともと当初より、最終年度には広く国際シンポジウムなどを開催し、そこでの成果の出版を目論んでいたが、コロナ禍のために形態は少し異なってしまったが、より広域に社会学やSTSなどを専門とする研究者の協力などをえて、Zoomなどの遠隔によって研究を推進できたのは、大変実りがあったことであると考える。 従来人類学分野と哲学分野は大変近い関係性野本に会ったことはいうまでもないが、社会学を含めた学問の細分化によりこれがおおきく変化ていることも確かである。その上、フランスではレヴィ=ストロースの影響下で、また英米別系譜による人類学理論が、21世紀以降まさに大きな成果をあげており、そこでは哲学理論の利用が見受けられる。この状況のなかで哲学と人類学のかつては常態であった交錯的作業がどのように可能かを考えるのが本科研の意義であり、その意味では最終報告書の書籍刊行に向け、当初より多くの研究者の多様な分野からの参加によって研究がすすめられたことは状況的にみても充分でsると考える。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は今年度が最終年である予定であったが、新型コロナウイルスを原因とするさまざまな事情により、海外渡航や対面での研究会などが制限される事態となってしまい、予算的にもまだ残存があるため1年延長して計画を行うものであるが、研究の内容のほとんどである人類学者たちによるとりわけ20世紀思想を受けての21世紀における人類学理論の進展を、哲学がわからどうとらえるか、そして哲学側のこうした知見を人類学の側でどのようにとらえなおすのかについての研究会はすでにほぼ完了し、現在は各自がそれぞれ最終報告書としての役割を果たす書籍出版に関する原稿を執筆し、それに対して更に相互的にコメントを行っている段階である。 次年度にむけて残存している基金はさほど多いものではないため、次年度はこの基金のすべてを成果出版物のための版下代にあて、メールベースで継続しているそれぞれの論文に対する論評を軸として刊行されるべき書物を完成させることが目標となる。書籍は勁草書房から共著として出版されることが確定しており、次年度においてはこの完成が何よりも目指されるべきものとなる。 人類学と哲学の交錯は、人類学が科学人類学や宇宙人類学、あるいはマルチスピーシーズ研究など理論的実践的転回を行っている現在まさに不可欠なものとなるであろう。そのことに対して、本研究が、一つの角度からであるにせよ、おおきな貢献ができるものとなると考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの影響により、当初予定していた海外学会発表や国内に於ける対面の研究集会、シンポジウムなどがほとんどなくなってしまい、予算残高がみこまれるため、次年度に繰り越して、研究成果として刊行す共著出版のための版下代にあることが有効であるとかんがえられたためである。 本科研の研究そのものは本年度における遠隔による研究会の開催そのほかでほとんどすんでおり、そのための交通費分も遠隔のためほぼ発生せず、金額を残し、成果を一般に向けて広く公開するための資金としてもちいることがより研究の趣旨に即していると判断した。 したがって次年度においては研究そのものにはこの予算を使用するものではなく、研究成果の発信に対して特化して使用する計画となっている。
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