今後の研究の推進方策 |
「進捗状況」において示したように、研究の計画の順序を入れ替えることで、研究を着実に進めている。2020年度は、2019年度に積み残した(1)「複雑系の科学の科学論的検討」という課題と、当初から予定されていた(2)進化論とシステム論の影響の検討と(3)創発主義の検討という三つの課題に取り組むことにする。(2)の課題については、スペンサーについての検討はすでに終了したので、ダーウィンにおける「進化」の概念を、科学論との関係の中で、検討することにする。この課題は(1)の課題とも関連づけて検討する必要がある。従来、「創発」はもっぱら対象の性質に関する概念として検討されてきた。しかし、「創発」は対象を認識する際の枠組みも規定している。このような進化論的認識論の着想を取り入れることは科学論における、還元主義と非還元主義との対立に新たな視座をもたらすことになるからである。(3)については、S. Alexander, Space, Time, and Deity, J. S. Haldane, Mechanism, Life and Personality, C. L. Morgan, Emergent Evolution, C. D. Broad, The Mind and Its Place in Nature といった代表的な創発主義者の著作から、創発の具体的な内実を明らかにすると同時に、彼らが前提としていた科学論について考察することにする。
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