この研究は、創発概念の概念史的研究に基づいて、創発を適切に意味づけることのできる存在論を明確化した。創発主義は、単純な要素の間の相互作用によって新たな秩序が生成することを主張するが、これまで科学哲学は創発を認識論的なものでしかないと見なしてきた。還元主義的傾向のせいで、創発現象を適切に意味づけることに失敗してきたのである。それに対して、この研究は、近代的な自然科学観が依拠している認識論や存在論を吟味しなおし、創発主義の主張を適切に意味づけることのできる枠組みを提案した。このような枠組みの提案は、複雑系の科学といった意味の生成を主題化する現代的な科学の評価に寄与するものである。
|