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2022 年度 実績報告書

近代日本における人格概念受容とその徳倫理学的背景

研究課題

研究課題/領域番号 19K00007
研究機関広島大学

研究代表者

後藤 弘志  広島大学, 人間社会科学研究科(文), 教授 (90351931)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2023-03-31
キーワード人格 / 徳倫理学 / トマス・ヒル・グリーン / 漢訳洋書 / 万国公法 / 戦争責任論
研究実績の概要

本研究は、日本近代初頭における人格概念の受容史を、第一期:明治20年代における訳語の確立まで、第二期:明治30年代から大正期における国民道徳論と教養主義との対立、第三期:戦時期昭和における国体論、教養主義、マルクス主義の対立という三つの時期に分け、《近代的個人および国民の形成》という新たな時代の要請と、受け皿としての《徳倫理学的土壌》という二つの観点を横軸としながら、とくに第一期と第二期に焦点を当てて再構成することを目的とし、その準備として訳語確定までの経緯を詳細に辿った。
中国語にも日本語にも対応語を見出すことのできないPerson概念受容の困難さは、それが神学的次元を持ち、「人間」概念とは内包と外延を異にすることにある。その訳出には中国における洋書漢訳と日本における蘭学・英学という二つのルートがある。この両者が幕末・明治の日本において合流し、最終的に「人格」という訳語として定着する。本研究は、この二系統のうち、中国における漢訳洋書第二期の英華辞典類と、第三期の『万国公法』におけるPerson関連訳語を系統的に比較分類し、現代の法律用語にその痕跡を見出すとともに、神学的次元をも加味した「人格」という訳語の成立までの道のりのはるかに遠いことを示した。
以上の考察を踏まえて、最終年度には、同概念の疑似身分制的受容の負の影響ゆえに、日本の哲学界は先の戦争を準備促進することになった、あるいは少なくともそれに歯止めをかけることができなかったのではないか、さらには、戦後日本における戦争責任論において、戦前と戦後の日本国民あるいは日本民族の人格同一性に依拠する「裏返しになった全体主義国家の責任論」やその類似のバリエーションが根強いことを手掛かりに、戦後においても、建前としての啓蒙主義的政治文化の定着の陰で、その負の影響が及んでいるのではないかについて反省的に考察する材料を提供した。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2023

すべて 図書 (1件)

  • [図書] 人間の人格性と社会的コミットメント2023

    • 著者名/発表者名
      ミヒャエル・クヴァンテ著、後藤弘志編
    • 総ページ数
      328
    • 出版者
      リベルタス出版
    • ISBN
      978-4905208129

URL: 

公開日: 2023-12-25  

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