最終年度である令和5年度は、研究課題の最終的な成果を示す著作『規範と人間』の執筆に引き続き取り組んだ。 本全体の主題としては「われわれ人間にとって「規範」がどんな働きをしているのか、どのように関わり合っているのか、ひいてはどんな存在者であるのか」を解明することにあり、その問題を「行為」「理解」「知覚」という三つの局面に即してより具体的に検討していくという、全3章構成となっている。令和4年度までに第1章および第2章はほぼ完成しており、令和5年度は、最後の第3章の執筆に取り組んだ。勤務校で草稿を用いた講義を行なうなどして、原稿のブラッシュアップも同時に進めることができた。現在、ほぼ完成というところまで漕ぎ着けており、令和6年度中の出版に向けて引き続き作業中である。 また、令和6年12月開催予定の西日本哲学会・大会シンポジウムの企画を担当することになったため、今回の研究課題に基づいたテーマを設定した。自分に加えて他2名の研究者にも提題を依頼し相談を重ねるなど、準備を進めてきたところである。 さらにメルロ=ポンティ・サークルという学会からシンポジウムへの登壇を依頼されたため、今回の研究課題にも密接に関わるヒューバート・ドレイファスに関する発表の準備を進めた。 研究期間全体の成果としては、初年度に和辻哲郎の倫理学理論に関する単著を公刊し、その後も共著3冊で和辻に関する論考を発表した。さらには日本倫理学会の大会シンポジウムに登壇し、和辻の倫理学の現代的な理論的可能性について提題を行なうなど、今回の研究課題の成果を様々な形ですでに示すことができている。
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