研究課題/領域番号 |
19K00009
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研究機関 | 専修大学 |
研究代表者 |
佐藤 岳詩 専修大学, 文学部, 准教授 (60734019)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | メタ倫理学 / I.マードック / エンハンスメント |
研究実績の概要 |
本年度は、前年度に引き続いて、メタ倫理学における研究の対象が、倫理的価値から規範性一般へと展開しつつある現状を踏まえつつ、もう一度、倫理的価値についての探求を行うために、そもそも倫理とは何かという点についての研究を行った。その成果は『「倫理の問題」とは何か』において示した。具体的には、R.M.ヘアやP.フットらの考え方を元に、四つの倫理の理解を示し、それぞれの関係などを明らかにした。中でも、I.マードックの提示した世界の見方としての倫理という理解は、従来の狭い英米系の倫理学をさらに広げる可能性をもったものであることが示された。 また、倫理的価値がそれ以外の事実とどのような関係にあるかを検討するために、H.パトナムやI.マードックの研究を参照し、『事実と価値と存在論――H.パットナムとI.マードック』において、事実と価値の間には断絶があるとするヒューム主義とは反対に、両者の間に連続性を認める立場の主張内容の精査を行った。 さらに、本研究課題は、メタ倫理学を応用倫理学まで接続することを目指しており、そのためにエンハンスメントを中心としつつ、人体に人為的に介入する生化学技術全般の倫理的妥当性を問う研究を行い、『心とからだの倫理学』においてその成果を示した。そこで、美容整形をはじめとした多くの技術は、個人の裁量で「人それぞれ、本人が幸せになるなら、それでいい」とされてしまいがちだが、実際には様々な点で社会や共同体のあり方と切り離すことができないことを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナウイルスの流行の影響により、研究会や学会などで意見交換をする機会が制限されているという問題は引き続き存在しているが、本研究の核となるマードックの研究などに関して、おおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は本研究課題の最終年となるため、特に、規範倫理学とメタ倫理学の関係という観点から、マードックやフットらの研究および、彼女らの次の世代の倫理学者の理論を精査し、最終報告につなげていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の流行により、計画していた学会出張が取りやめになったため。
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