研究課題/領域番号 |
19K00012
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研究機関 | 長野県看護大学 |
研究代表者 |
屋良 朝彦 長野県看護大学, 看護学部, 准教授 (90457903)
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研究分担者 |
井村 俊義 長野県看護大学, 看護学部, 准教授 (00647943)
松本 大理 山形大学, 地域教育文化学部, 准教授 (20634231)
本田 康二郎 金沢医科大学, 一般教育機構, 准教授 (40410302)
金光 秀和 金沢工業大学, 基礎教育部, 教授 (50398989)
星 幸江 長野県看護大学, 看護学部, 助教 (90634626)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 倫理学 / 精神障害 / コミュニケーション / ピアサポート |
研究実績の概要 |
ここ十数年で日本の精神医療は大きな転換を迎えた。厚生労働省が平成16年9月に「精神保健医療福祉の改革ビジョン」を提示して以来、精神医療は「入院医療中心から地域生活中心へ」という方策が実施され、障害者が退院・退所し、地域への定着を促す事業が推進されている。 しかし、実際には精神障碍者の地域定着が進んでいない。それゆえ、精神障碍者の地域定着支援の拡充が要請されている。本研究の目的は、精神障碍者のピアサポートを支援する中で、精神障碍者の地域定着・就労支援事業において予想される問題を解決し、協力関係を構築・強化するための対話技法を構築することである。具体的には、紛争解決のための対話技法としてのコンフリクト・レゾリューション理論と、精神障碍者との対話技法であるオープン・ダイアローグ、SST・当事者研究等を組み合わせた対話技法を開発することである。 また、これらの対話技法を実践するために、南信州を中心としたピア・サポートの会「ピア南信しあわせの種」を、2019年10月から、地域の医療者と障碍者とともに立ち上げた。そしてこの活動を着実なものにするため、長野県宮田村の地域おこし事業である「地域おこし 井戸端会議実行委員会」と連携を取っている。 現在、コロナ禍の下、多くの活動が制限されているが、月1回の定例会(勉強会を含む)、月1~2回の哲学カフェ、オンライン読書会などを行っている。2021年度は2回、定例の公開研究会を開催し、ピアサポートメンバーも発表した。また2022年8月には「第20回子どもの哲学国際学会」でシンポジウムを行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
精神障碍者の地域定着を促す対話技法の開発はある程度終了した。具体的には、精神療法における対話技法としてのオープン・ダイアローグ、当事者研究、認知行動療法等の習得である。 現在は対話技法の実践および有効性の検証段階として、2019年4月から、精神障碍者を中心としたピアサポートの会の活動を開始し、10月には「ピア南信しあわせの種」を、地域の医療者と障碍者を中心に発足させた。また、この会は地域との連携を深めるため、長野県宮田村の地域おこし事業である「地域おこし 井戸端会議実行委員会」とも連携して、哲学カフェや研修会などの様々な活動を行っている。この件は、長野新報に報道された。その後、月複数回のミーティングをコアメンバーと行っている。 2020年2月中旬からのコロナ・エピデミックの悪化により、対面の活動を一時休止していたが、2021年4月から、コロナの状況を見つつ、対面を中心に毎月の定例会(情報交換や勉強会)など、できる限りの活動を行った。ただし、障碍者にはオンラインができない方も出てきたので、オンラインでの活動は最小限になった。また、木曽看護専門学校(精神看護学)と長野県看護大学(生命倫理)で、メンバーと学生とでグループワーク研修会を行った。
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今後の研究の推進方策 |
コロナ・エピデミックがいつごろ終息するかにもよるが、できる限りの活動を模索していく。具体的にはオンラインの活動も可能であるが、障碍者の中にはオンラインの利用ができない者もおり、そのような人々を見捨てることもできず、活動を中止することもできないので、感染対策をしつつ可能な限り対面の活動を模索している。具体的には、月1回の定例会(研修会を含む)、月1~2回の哲学カフェ、オンラインができない人にその環境を提供しつつのオンライン勉強会などである。 2022年5月から、定例の研修会「オープンピア種」を地元の医療福祉従事者や研究者と行い、ピアサポート活動の精神医療福祉上の有益性の認知を浸透させ、精神医療福祉の抜本的改革を目指す。また、2022年6月には「子どもの哲学国際学会」でシンポジウムを行い、子どものメンタルヘルスの問題がその後の人生にどのような影響を及ぼすか、そしてそれを救うためにピアサポート活動がどれだけ有益かを発表する。 それらと並行して、分担研究者・星とともに、当事者研究やSST、マインドフルネス、ユマニチュード、認知行動療法などの精神療法を、新たなコミュニケーション技法として、研究していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度はコロナ・パンデミックにより、研究活動が制限されていたが、2022年度から研究活動が再開できる見通しがついたため。
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