研究課題/領域番号 |
19K00014
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
土師 俊子 (服部俊子) 大阪市立大学, 大学院都市経営研究科, 准教授 (50609112)
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研究分担者 |
金城 隆展 琉球大学, 病院, 特命助教 (10600174)
樫本 直樹 産業医科大学, 医学部, 講師 (20622533)
堀江 剛 大阪大学, 文学研究科, 教授 (50379898)
安部 彰 三重県立看護大学, 看護学部, 准教授 (60516847)
大北 全俊 東北大学, 医学系研究科, 准教授 (70437325)
土屋 貴志 大阪市立大学, 大学院文学研究科, 准教授 (90264788)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 医療組織倫理学 / 倫理制度 / 臨床倫理 / アクターネットワーク論 / 制度的現実 |
研究実績の概要 |
本研究は、医療組織倫理学の構築を目的に4つの課題を順に実施する計画で開始したが、初年度の研究成果により、昨年度に組織内制度や倫理活動の記録を中心に進める研究計画 (当初の課題②→①③→④)に変更し、実際の病院における臨床倫理活動の調査を開始した。今年度は、文献調査(課題①③)と並行して本調査準備を行い、年度末にインタビュー調査を行った。インタビューデータ整理は次年度になるため、課題②については次年度の成果となる。 本年度の研究成果は、①の課題については、臨床倫理制度の系譜を整理することで、アメリカで登場したclincal ethicsが日本に臨床倫理として輸入される段階で、臨床倫理の概念解釈が異なったものになっていることがわかった。また、その差異は医療専門職制度、医療保険制度、病院制度という、両国の「医療をめぐる制度」に依拠したものであることが推測された。アメリカで成立したとされる臨床倫理制度ー委員会・コンサルテーションーが日本でも必要であるという見方が、病院が前提とする制度の違いを見ることなく、ただ必要であるという見解が主流となり、病院機能評価がなされているが、それが、臨床の倫理問題に対応する病院制度として適切な装置なのかについて問い直す必要があることがわかった。③の課題については、ルーマンのシステム論やサールの社会存在論を参考にし、医療組織の倫理問題を(ディス)コミュニケーション問題ととらえることで、あらためて個人倫理として創成された臨床倫理を、組織の観点から問い直すための仮説形成の準備ができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
病院関係者へのインタビュー調査と病院フィールド調査がコロナ禍で3月末に延期されたため。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の期限を一年延長し、次年度を最終年度とする計画に変更する。前半にはインタビュー調査データの整理と分析を行い、当初の最終年度の計画とした課題④である、これまでの文献調査の成果や実際の病院調査データ分析を統合的に把握する。後半には、医療組織倫理の論点を整理し、今年度末までに論文を完成させ年度末までに公表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画では、今年度が最終年度だったが、期間延長し次年度が最終年度になったため、成果公表のための費用計画が次年度に変更された。 今年度半ばには予定していたインタビュー調査がコロナ禍により年度末に延期され、データ整理のための費用も次年度に繰越となった。また、学会がオンライン開催になり、予定していた旅費は不要になった。これらの理由により、今年度までに予定していたデータ整理のための費用や公表のための費用を今年度に使用できず、次年度に使用することとなった。残額は、次年度の継続する文献調査・学会発表・論文公表のために使用する予定である。
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