研究課題/領域番号 |
19K00015
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研究機関 | 北海道医療大学 |
研究代表者 |
松本 由起子 北海道医療大学, 心理科学部, 講師 (10438335)
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研究分担者 |
野々村 淑子 九州大学, 人間環境学研究院, 教授 (70301330)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 家族史 / 精神分析 / エディプス / 母子関係 / 子ども史 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、第二次世界大戦前後の精神分析理論と実践とを通じて、そこに見られる規範的な近代西洋の家族像を、分析当事者である分析家の家族像とあわせて検討し、近代家族史を再構成し歴史化することにある。そのため、現代において広範に「普遍的な家族像」と考えられがちなイメージを、そのような家族像を「前提」とすることで個人の「精神」の分析・統合を試みた精神分析の潮流と、具体的な家族をめぐる周辺情報と関連づけ、そのとき見えてくる精神分析における「普遍」の歴史性を「家族史」に着地させて、家族像をめぐる「普遍性」を歴史的視点で問い直そうとしている。
今年度の成果としては、九州大学大学院人間環境学研究院ベースの「教育と社会の生物学的基盤」に継続的に参加し、家族の歴史的ありかたと切り離せない「教育」という営為を、より広く長い射程を持つ生物学的基盤という視点から再考し、2021年7月に発表「教育と階層の移動:19世紀イングランドを中心に」を行った。
(a)クライン派の理論と実践に見る家族像の推移、(b)シャープ、 メラニー・クライン、スーザン・アイザックスの家族・教育と、理論・実践における家族像の照合、(c)各者の「論争」におけるスタンスと家族像の関係、(d)精神分析的家族像をめぐる現実と幻想の関係、(e)精神分析における規範的家族像をめぐる「論争」の役割については、勁草書房から刊行予定の『(仮)「逸脱児」 を作り上げる――孤児、貧困児、施設児 と医学 をめぐる子ども史』の第7章「(仮)精神分析における家族規範敷衍の容態―「論争」を通して―」として発表の場を得て、2022年3月に執筆者一同で研究会を行い、担当章について発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初計画にある、海外の研究協力者2名を招聘しての、分析史と家族史の接続に関するセミナーが、COVID-19の影響を受けて、まだ実施に至っていない。
エラ・シャープを教育分析したハンス・ザックスに関する現地調査も、同じ理由で実施に至っていない。
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今後の研究の推進方策 |
セミナーについては、COVID-19をめぐる状況のモニタリングを続け、オンラインではない実施の可能性を探り、遂行時期について交渉を継続、可能な限り早い段階での実施を目指す。
現地調査については、エージェントを立てることも視野に入れて、関係機関と協議する。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19をめぐる状況が予想外に長期化し、オンラインでの開催を避け、海外研究協力者を招聘して行いたいということで合意を得ているセミナーの開催時期を睨んで、実施用の資金を残して、研究期間の延長を申請したため。
引き続き不安定な状況を踏まえて、プランBとしてのオンライン実施の準備を進めつつ、日本への招聘の可能性を残しておくという計画である。
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