研究課題/領域番号 |
19K00016
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研究機関 | 埼玉医科大学 |
研究代表者 |
種田 佳紀 埼玉医科大学, 医学部, 講師 (40610324)
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研究分担者 |
佐藤 亮司 名古屋外国語大学, 現代国際学部, 講師 (90815466)
林 禅之 埼玉医科大学, 医学部, 助教 (90846867)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 意識 / 道徳的地位 |
研究実績の概要 |
それぞれがすすめた研究の成果は、例えば、林禅之、「現象的意識の不可逆的喪失は人格の死を含意するのか」、第38回日本医学哲学・倫理学大会にて報告された。本発表では、現象的意識の不可逆的喪失をもって人格の死とするのではなく、むしろ、人格にとって重要なのは、それが行うことのできること、つまり機能の残存であり、人格の死とはむしろ機能完全剥奪として捉えらる可能性について論じた。こうしたアプローチは、意識についての私たちの直観には寄り添うが、一方、閉じ込め症候群などの事例においては、当事者の道徳的地位についての私たちの直観と鋭く対立するものであり、そうした点へのさらなる研究が必要となるものである。 また、林禅之、種田佳紀「ヒト生殖細胞系列のゲノム編集にまつわる倫理的問題の検討」での道徳的主体とは何かについての議論にも当科学研究費はいかれされた。本発表では、親が子に対してどのような道徳的責任を持つかを論じつつ、生殖系列へのゲノム編集がどのような場合に許容されるか/むしろ実施すべきかを検討したが、その際の将来世代(これから生まれる世代)の道徳的地位をどう見積もるかについて、あるいは生誕していない胎児の道徳的地位について検討する際に当科学研究で得られた知見が用いられた。 その他、佐藤亮司の科学研究費(若手研究)での発表の中に当科学研究費と関連する研究が行われており、2020年度以降はこうした研究成果について学際的な検討をすすめていくことになる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度では、まずこれまでの研究を踏まえて、文献研究と、研究者同士での議論を進めていくこととしていたが、研究者各自の文研研究は着実に進み、また年間数回の研究上の討論も実施した。その一部は成果として学会等で発表された。
また、2020年度実施予定のオックスフォード大学でのワークショップについても、現地ファカルティと具体的な日程や、ワークショップのテーマ等についても議論をすすめている。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度では、オックスフォード大学をはじめとしたイギリスの大学への訪問、ならびにワークショップの打診をしたい。また、CoRN等の国際学会での、意識レベルの概念分析についての発表も視野に入れることとしたいと計画していた。 当初通り準備はすすめていたが、新型コロナウイルスの感染拡大によって、残念ながらワークショップは2021年度に延期することが決まった。代替的に、ウェブ開催が決まったASBH、ならびに日本生命倫理学会での発表を検討している。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度に計画していたオックスフォード大学でのワークショップ開催費用が、当初見込みよりも多くなる見通しが出てきたため、20年度への留保を多く準備した。
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