今年度は、昨年度に引き続いて、(1)竹内外史の論理哲学、(2)高階論理の証明論的意味論、(3)最初期フッサールの論理哲学、(4)志向性の論理、について研究を進めた。(1)竹内とフェファーマンを比較する研究については、予定通りに論文を出版することができた。また、竹内、末綱、西田らの直観概念に関する論文については、ロレーヌ大学のアラナ教授との研究を続けて予定していた量の3分の2ほどのドラフトを書くことができた。 (2)高階論理の証明論的意味論についてはパリ大学のナイーボ准教授との共同研究を進めて、60ページ弱ほどのドラフトが書けた。 (3)最初期フッサールの論理哲学については、ドラフトの仕上げ作業に入った。(4)志向性の論理については、論理学パートはすでにできていたため、前半の哲学パートの仕上げの最終段階に入ることができた。 研究期間全体を通じての成果は次のようにまとめられる。本研究は、日本が産んだ戦後最大の論理学者である、竹内外史の論理哲学にアプローチすることで、形式主義の新たな側面に光を当てて解明することが目的であった。これまでは竹内外史はもっぱら数学者として扱われてきたが、本研究によって、京都学派の哲学との繋がりが明らかになってきたことが最大の成果である。特に、竹内外史の哲学的な散文には、「行為的意志的直観」といった西田哲学のキーワードが登場すること、そして竹内の「mind」ということばは、西田哲学の「自己」で解釈できるということが判明した。また、竹内が哲学的な理由からこだわり続けた順序数の整礎性証明を整理して再構成するという論理学的な成果も得られた。関連して、戦後の証明論を代表するフェファーマンとの比較研究を進めることができた。予想外の副産物としては、東洋的な自己の哲学をデジタルツインの哲学や論理学に応用する研究も進めることができた。
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