研究課題/領域番号 |
19K00023
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
大谷 いづみ 立命館大学, 産業社会学部, 教授 (30454507)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | PLAN75 / 高齢者と安楽死 / 姥捨て伝説 / 格差社会 / キリスト教コミュニティ / 死生観 / 自殺 |
研究実績の概要 |
本年度の研究実績として、第一に、75歳以上の高齢者に死の選択を認める架空の近未来を描いた映画『PLAN 75』について、早川千絵監督を招いた上映会およびトークイベントを挙げる。映画『PLAN 75』は第75回カンヌ映画祭「ある視点」部門に正式出品され、カメラドール・スペシャルメンションを受賞した話題作で、その後、テサロニケ国際映画祭受賞、日本ブルーリボン賞の受賞や第95回米国アカデミー賞国際長編外国語映画賞日本推薦作品、日本アカデミー賞など国内外で様々な受賞やノミネートが続いた。報告者が同映画のパンフレット解説を依頼されたことをきっかけに、本イベントの実現につながった。高齢社会、格差社会における命の尊厳を問いかける作品の主題に鑑み、多様な事情をもった人の参加を保障するべく、対面の上映会では車いすの動線を確保し日本語字幕付きのバリアフリー上映を行い、対面会場とオンラインでつなげたzoomウェビナーでは手話通訳と文字通訳を保障して、対面会場とzoomウェビナーをあわせて200人を超える参加者を得て成功裏に終わった。早川千絵監督を交えたトークセッションでは、安楽死制度の是非、自己責任論の強化、日本社会の空気、キリスト教コミュニティとの差異等、本研究課題に直結する論点が幅広くだされ、本実績は、研究成果を広く一般市民に還元するものとなり、報告者の所属大学で2022年度のグッドプラクティスに採択された。 本研究に通底する第二の成果として、報告者が電動車椅子と訪問介護を常用する障害当事者であることに由来する報告および論文を挙げる。移動・情報アクセシビリティおよび障害と教育の関係にかかわる研究は、報告者の年来の問題意識のオルタナティブな可視化であり、本研究課題とは切り離せないものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前半は勤務校での不測の事態への対応に追われることになった。後半は、5で述べた『PLAN 75』の上映会およびトークイベントが予想外に大がかりなものとなったため、その対応に追われた。 いずれも、COVID-19への規制が緩和されて人出が多くなる中で、細心の注意を払って対処しなければならない、感染症に脆弱な報告者特有の事情がある。 以上より(3)やや遅れていると自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究のまとめとして以下を行う。 (1)『PLAN 75』の上映会およびトークイベントを振りかえり、分析をすすめて、イベントに参加した研究者と複数回の研究会を行い、特集をまとめる。 (2)これまでの研究の成果を単著にまとめる。 (3)本研究の成果の発展的展開となる研究を立案する。
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次年度使用額が生じた理由 |
7で述べた事情により次年度使用が生じた。会計処理が間に合わなかった前年度の執行分については、すでに対応済みである。残額については、8で述べた研究の遂行に使用する。
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