研究課題/領域番号 |
19K00029
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
澤田 哲生 富山大学, 学術研究部人文科学系, 准教授 (60710168)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | メルロ=ポンティ / リシール / 発達心理学 / 精神病理学 / 精神分析 |
研究実績の概要 |
本事業初年度の令和元年度は、メルロ=ポンティの発達心理学の知見へのアプローチとマルク・リシールの精神病理的現象へのアプローチにかかる資料を精査・分析した。 メルロ=ポンティについては、第六回メルロ=ポンティ哲学研究会(令和元年9月9日、立教大学)と第一回立命館現象学研究会(令和元年11月30日、立命館大学)において、資料の調査と精査の結果を報告した。また、メルロ=ポンティの発達心理学へのアプローチには、彼の病理的現象へのアプローチとの深い類縁性が確認されたことから、後者に関する研究をブルガリアの国際研究雑誌(Divinatio, 45)に発表した(フランス語、2020年2月)。 マルク・リシールについては、彼の統合失調症の症例に対するアプローチに関する研究を国際雑誌(Annales de phenomenologie, France/Germany)に発表した(フランス語、2019年12月)。また、彼の政治思想における病理的現象の位相に関する研究を、共著書としてフランスの出版社(Aux marges de la phenomenologie: Lectures de Marc Richir, Hermann, 2019, フランス語)から公刊した。さらに、一般読者のための入門書として、リシールとサシャ・カールソンの対話本の邦訳を監訳し公刊した(共訳『マルク・リシール現象学入門 サシャ・カールソンとの対話から』、ナカニシヤ出版、2020年2月)。 当該年度の研究の総括として、2020年3月26、27日に、マルク・リシールの現象学をめぐる国際会議を開催する予定であったが、新型コロナウィルスにより次年度もしくはそれ以降に延期となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
メルロ=ポンティの発達心理学へのアプローチに関しては、彼が参照したテクストのほとんどを精査・分析することができた。リシールの精神病理学へのアプローチに関しても同じである。また上記の概要のとおり、研究成果のアウトプットも随時行うことができた。したがって、令和元年度における研究の進捗状況を「おおむね順調に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
研究課題が示すとおり、本研究の最終目標は、「欠如的アプローチ」とならない身体理論を哲学において構築することになる。したがって令和2年度は、前年度の研究成果を基にこの問題の解明に着手する予定である。 とはいえ、新型コロナウィルスの影響により、国内における研究のための移動、海外の学術機関での資料収集や研究発表が、きわめてむずかしい状況となっている。このままの状況が続く場合は、SkypeやZoomなどの遠隔コミュニケーションツールを使用することで、国内外の研究者と研究の意見交換を行い、研究を推進するつもりである。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年3月26、27日に、マルク・リシールの現象学に関する国際会議を大阪大学で開催予定であった。その際に、ヨーロッパから2名の講演者を招聘するはずであったが、1名増えたため、科研費の一部の前倒しによる使用を申請した。また日本人スピーカーの旅費と謝金も準備していた。 しかし新型コロナウィルスの影響により、国際会議そのものを延期せざるをえなかった。それにともない、令和元年度の予算による2名分の旅費および謝金、前倒し使用による1名分の旅費および謝金、さらには日本人スピーカーの旅費と謝金が次年度(令和2年度)使用額に持ち越しとなった。コロナウィルスにともなう諸問題(渡航、集会、等々の自粛)が解決された場合は、この次年度使用額で、令和2年度中に延期となったシンポジウムを開催する予定である。
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