研究課題/領域番号 |
19K00029
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
澤田 哲生 富山大学, 学術研究部人文科学系, 准教授 (60710168)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 現象学 / 発達心理学 / 精神病理学 / メルロ=ポンティ / リシール / 人類学 |
研究実績の概要 |
令和2年度は本事業の2年目であった。新型コロナウィルスの感染拡大が止まらないなかで、国内外の学会への参加、昨年度から持ち越しとなっていた国際会議(マルク・リシールの現象学に関する国際シンポジウム)の開催は断念せざるをえなかった。したがって、当該年度は資料の収集、精査、精読、分析、そしてこれまでの研究の蓄積の中間的な綜合をおもな研究作業とした。したがって、事業の予算の大半は物品購入(図書、研究設備、等々)に充てられ、国際シンポジウムの開催にともなう研究者の招聘、国内学会への参加にともなう移動、国際学会への参加にともなう海外への移動にかかる支出(出張、謝金、等々)はほとんどなかった。 以上の条件下で、令和2年度の研究活動は次のとおり遂行された。メルロ=ポンティに関しては、これまでの研究をまとめ、その成果を令和2年8月に単著書(『幼年期の現象学 ソルボンヌのメルロ=ポンティ』、人文書院)として出版した。その過程において、一般向けのセミナー、大阪大学檜垣立哉教授の科研プログラム(「哲学と人類学との新たな交錯」)により企画された合評会、等々で本書の成果を討議し、おおむね好意的な評価を得た。 マルク・リシールに関しては、彼の精神病理学へのアプローチにかかる著書、論文、研究文献だけでなく、彼の人類学(レヴィ=ストロース、ピエール・クラストル、等々)へのアプローチにかかる資料も精査、分析した。その成果を踏まえ、リシール文庫開館記念シンポジウムの論集に拙論を投稿した(令和4年度中に公刊予定)。 当該年度の研究の総括として、2021年1月から2月に、前年度に中止せざるをえなかったマルク・リシールの現象学をめぐる国際会議を開催する予定であった。しかし、新型コロナウィルス感染症にともなう海外の研究者の渡航の困難により、延期の措置を取った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナウィルスの蔓延にともない、国内外での学会や研究会での研究成果のアウトプットは十分にできなかった。しかしこれまでに収集した資料の区分け、精査、分析は当初の予定以上に進んだ。それにより、メルロ=ポンティの発達心理学へのアプローチについては、予定以上に早く、研究成果をまとめることになり、単著書の公刊にいたった。これは本事業において、研究の片翼がおおむね完成したことを意味している。したがって、令和2年度における研究の進捗状況を「おおむね順調に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
研究課題が示すとおり、本研究の最終目標は、「欠如的アプローチ」とならない身体理論を哲学において構築することになる。メルロ=ポンティに関しては、令和2年度の単著書公刊により、研究の大部分が完成した。かたや、マルク・リシールの病理的現象へのアプローチとそこから提示されうる身体論の研究については、その半分ほどが課題として残されている。したがって令和3年度は、マルク・リシールを中心とした現代フランス現象学運動の研究を、前年度以上に、推進する予定である。 新型コロナウィルスの影響により、国内における研究のための移動、海外の学術機関での資料収集や研究発表は、令和3年度もきわめて難しくなることが予測される。このままの状況が続く場合は、SkypeやZoomなどの遠隔コミュニケーションツールを使用することで、国内外の研究者と研究の意見交換を行い、研究を推進するつもりである。さらには、論文、著書、翻訳、等々の出版活動、さらにはその積極的な広報活動により、本事業をいっそう推進するつもりである。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和3年の1月もしくは2月に、昨年度新型コロナウィルスの蔓延により延期せざるをえなかった、マルク・リシールの現象学に関する国際会議を大阪大学で開催予定であった。その際に、ヨーロッパから3名の講演者を招聘するはずであった。そのために、3名の海外渡航のための旅費と講演謝金を用意していた。また日本人スピーカーの旅費と謝金も準備していた。 しかしその時期、新型コロナウィルス感染症が猛威をふるい、二度目の緊急事態宣言も発令された。研究者の国内外の移動が実質的に不可能となったため、国際会議そのものを延期せざるをえなかった。こうした経緯から、旅費と謝金が次年度(令和3年度)の使用額に持ち越しとなった。コロナウィルスにともなう諸問題(渡航、集会、等々の自粛)が解決された場合は、この次年度使用額であらためて国際会議を開催する予定である。
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