2023年度は当該事業の最終年度であり、研究課題のアウトプットと総括を行った。その成果として、Levinas et Merleau-Pontyという国際共著で、メルロ=ポンティの身体論に関する論文(フランス語)を公刊した。日本語の論文としては、『モラリア』誌(東北大学文学研究科哲学倫理学研究室)で、上記論文を深化させた内容の論文を公刊した。また、みすず書房で、メルロ=ポンティの講義録の邦訳(『子どもの心理‐社会学』、共訳)を公刊した。 研究発表という形式でのアウトプットに関しては、6月にフッセル・アーベント(東北大学文学研究科)で、メルロ=ポンティの身体論に関する発表を行った。7月には日本サルトル学会(立教大学)で、サルトルの想像力理論と情動性に関する発表を行った。同月、立命館大学間文化現象学研究センターで、上記の邦訳の刊行記念イベントで、メルロ=ポンティのソルボンヌ講義に関する発表を行った。9月には、ハンナ・アーベント(東北アーレント研究会)でメルロ=ポンティとアーレントの子ども観に関する発表を行った。11月には、本事業の総括として、マルク・リシールの現象学に関するシンポジウムを東北大学で開催した。2024年3月には、カントとフランス哲学と題されたシンポジウム(日仏哲学会)に招へいされ、リシールの『判断力批判』へのアプローチに関する研究発表を行った。 本事業では、研究課題のメインテーマである「身体」について、メルロ=ポンティとリシールの現象学から考察してきた。2023年度以前の研究成果と合わせて、上記の研究成果により、子どもおよび患者の身体性を欠如的なアプローチとは別の観点から記述することが可能となった。この記述方法として、「自己愛」、「崇高」、「絡み合い」、「浸食」等々の概念が提示された。
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