研究課題/領域番号 |
19K00030
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
池田 丈佑 富山大学, 学術研究部教育学系, 准教授 (50516771)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | グローバル倫理 / 国際関係論 / 難民 / 国内避難民 / 強制失踪 |
研究実績の概要 |
2019年度は、研究会における報告1件と共著による本の出版が1冊あった。内容は、本課題における理論的検討部分に該当する。報告は、2019年9月に上智大学で開催された研究会でのもので、「庇護の『ユダヤ人』性とその限界ー庇護から保護へ・再論」という題目である。一方共著は、小泉康一(編)『「難民」をどう捉えるか-難民・強制移動研究の理論と方法』(慶應義塾大学出版会、2019年10月)であり、同書の第6章にあたる。後者については、2019年度日本平和学会秋期大会(難民・強制移動民分科会)においてbook launchの形でラウンド・テーブルを設け、書籍刊行に関連して別途公表の場をもった。
上記各機会を通して、計画書で記した「グローバル倫理の『内在的限界』」にかかる議論が進んだ。とりわけ、グローバル倫理が解決を試みようとする課題に直接巻き込まれた「当事者の視点」を織り交ぜた批判的検討について、かなりの進捗をみた。以上の公表・刊行により、以前から進めてきた「内在的限界」に関する議論は一通り完結した。フィールドワークに基づく「外在的限界」の把握と検討が、本課題で残された作業内容となる。
なお、これらとは別に、グローバル倫理を「制度化」した試みとして「グローバル・ポリシー」を位置づけ、研究を進めている(ただし、本課題ではなく別課題である)。これについても制度化の理論を概説した研究が出来上がり、共著論文(セカンド・オーサー扱い)にて刊行予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、理論的検討については前述の通り成果が公表され、予定通りの進捗を見せた。一方、海外フィールドワークを伴うものについては、訪問予定地の政情不安と新型コロナウィルスの感染拡大とが重なり、フィールドワークの実施そのものが見送られた。
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今後の研究の推進方策 |
本課題で設定していたフィールドワーク先(インド、バングラデシュ、スリランカ)における新型コロナウィルスの影響であるが、本報告書提出時点(2020年6月)において、前2国については感染の収束がみられず、むしろ悪化している状況である。一方、スリランカに関しては感染者数、拡大の状況を見ても相対的に穏やかである。
海外渡航に関する制限が今後どうなるかによるものの、さしあたりは、以下の方針に切り替えて研究を実施したい。1)フィールドワークについては渡航制限が解除されるまで原則控える、2)ただし、スリランカに関してはベトナム、タイ等と同様に比較的早い時点で制限解除が期待できるため、フィールドワークの準備という点ではスリランカでの実施を念頭に置いて準備する、3)以上3カ国については、これに加え、オンラインによるインタビュー調査の比重を高める。具体的には現地NGO関係者について、直接のインタビューに代わる形や、過去の聴き取りを補う形でのオンラインインタビュー実施を検討・準備する、4)理論的検討については予定通りの進捗を見せているので、この部分に関して研究をまとめ、今後先行して成果を公表する(なおこの部分については、本来予定していたInternational Studies Associationでの報告が見送られたため、2021年4月に予定されている次年度大会に持ち越される。またこれとは別に、2020年度日本国際政治学会における報告も決定しているため、公表の機会は複数あることになる)。
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度実施予定であったフィールドワークが実施不可能になったことが理由である。具体的には、バングラデシュにおける学会報告(現地の政情不安等のため)、インドにおけるフィールドワーク(新型コロナウィルスに伴う渡航禁止のため)がこれにあたる。
これらを踏まえ、今年度以降は(ア)フィールドワークについては、渡航制限解除が出るまでこれを行わない、(イ)その上で、計画書に予定していた3カ国のうちスリランカについては、新型コロナウィルスの影響が比較的穏やかなので、実施の優先順位を上げて準備を進めておく、(ウ)それ以外についても、状況が許せばオンラインインタビューを企画し、先にこれを実施した後、渡航制限解除に合わせてフィールドワークを企画する、(エ)国際学会報告についても上記基準に準ずる形で準備を進める、という4つを具体的方策としてあげ、これらに沿って研究を進めてゆく。
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