研究課題/領域番号 |
19K00032
|
研究機関 | 大阪経済大学 |
研究代表者 |
稲岡 大志 大阪経済大学, 経営学部, 准教授 (40536116)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | ライプニッツ / 数学の哲学 / 図形推論 / 無限小幾何学 |
研究実績の概要 |
2022年度は前年度に引き続き、パリ時代のライプニッツの数学研究の集大成である『算術的求積』の詳細な読解を中心とした研究を行った。各命題の証明技法の検討、『算術的求積』関連のテクストとの突き合わせ、手稿の検討などを進めた。また、一次資料の検討に並行して、現代の数学の哲学の研究動向を関連論文などの読解から把握し、図形を用いた証明を分析する枠組みの構築にも努めた。 上記の研究に加え、ライプニッツの数学的実践をより広い時代的視野に位置づけるために、17世紀の数学者にとっての共通課題の一つであったサイクロイドの求積をモデルケースとして、ロベルヴァル、パスカル、デカルト、ライプニッツの求積を検討し、個々の証明において図形がどのように活用されているかを明らかにする研究も行った。ライプニッツの場合、サイクロイドの求積は『算術的求積』命題12と13でなされているため、これまでの研究成果を踏まえた考察ができ、らいぷにっつの独自性も明らかにする見通しを得ることができた。 さらに、こうした数学者による図形活用法の進展を考察する枠組みとして、記号の視覚性を重視する現代の数学の哲学研究を活用した図式を考案した。これにより、本研究課題は、無限概念や連続概念に関する哲学的議論の進展と図形の活用法との間に連動が見られるのかどうかという観点で、無限小幾何学から近代解析学に展開する17世紀のヨーロッパ数学を捉えるという研究テーマにも拡張できるという認識を得ることができた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
『算術的求積』の研究は少しずつであるが進めており、それにともない、ライプニッツの図形活用法に関する理解も、漠然とした形ではあるが、まとまりつつある。また、今年度の研究を進めることで、数、自然言語、図形という多様な記号が用いられる数学的テクストを分析し、記号の活用法をパターン化することで、17世紀ヨーロッパ数学の展開を明らかにするという本研究課題の後続となる研究課題の発想につなぐこともできた。論文などの成果としてはまだ出せていないが、今後アウトプットを積極的に出すことに努めたい。
|
今後の研究の推進方策 |
今後も引き続き『算術的求積』の研究を進め、この著作の日本語訳の作成も視野に入れた研究をおこなう。また、前年度考案した図形活用を分析する図式をさらに洗練させるために、多くの事例を収集し、考察を進める必要がある。ライプニッツ中後期の数学研究をこの図式で解釈し、また、図式自体も検討し、ライプニッツの数学的実践の変遷がより詳細に跡づけられるよう務める。
|
次年度使用額が生じた理由 |
2022年夏に開催予定であった第11回国際ライプニッツ学会が、新型コロナウィルス感染症のため2023年夏に開催延期になったため、本年度の助成金を次年度に使用する予定である。
|