前年度に引き続き、パリ時代のライプニッツの数学研究について研究を進めた。具体的には、『算術的求積』の検討を前年度から引き続き進め、個々の定理の証明の分析を行った。『算術的求積』に結実する遺稿の検討も検討し、パリ時代のライプニッツの数学研究の進展具合をより綿密にたどることができるように務めた。 これに並行して、ライプニッツの数学研究における図形の機能をより綿密に理解するために、ライプニッツに先行するデカルト、ロベルヴァル、パスカルといった数学者のテキストを検討し、とりわけ当時の数学者たちが求積のために使用した不可分者のそれぞれの扱い方の特徴や、幾何図形上での求積計算の方法などを整理して、17世紀ヨーロッパ数学におけるライプニッツの独自性を歴史的な観点からも浮き彫りにできるようにする基盤を整えた。 また、ライプニッツの無限小解釈に関する有限主義的解釈として影響力の高いHide Ishiguroの一連のライプニッツ研究を批判的に検討し、Ishiguroによるライプニッツ解釈の整合性や射程を明らかにする研究も合わせて行った。 研究成果としては、2021年に開催予定だったが新型コロナウイルス感染症拡大の影響で2年延期となって2023年8月に開催された第11回国際ライプニッツ学会に参加し、研究発表を行った。数学史研究者やライプニッツの全集の編纂作業を手掛ける研究者と意見交換を行い、過去の数学者のテキストを哲学者が研究するうえで留意するべき点などを改めて確認することができた。学会で発表した内容は現在英語論文としてまとめ、国際誌への投稿を準備しているところである。
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