研究課題/領域番号 |
19K00034
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研究機関 | 高崎経済大学 |
研究代表者 |
福間 聡 高崎経済大学, 地域政策学部, 教授 (40455762)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 非理想理論 / 規範倫理学 / メタ倫理学 / 契約主義 / 構成主義 / 帰結主義 / 肩代わり義務 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、「倫理学における非理想理論の構築」を目指すことにあるが、本年度は二つのことを行った。 一つは、理想的な正義論から非理想的な正義論へと自らの理論を展開したロールズの『政治的リベラリズム』の翻訳・出版である。善の構想が穏当な多元状態にあるのみならず、理にかなった正義構想も複数存在する現代社会において、社会の基礎構造を統制する正義原理に市民は合意可能であるのかが、本書では考察されている。倫理学における非理想理論を検討するにあたって、ロールズのこの現状認識は極めて重要であり、翻訳をすることで再確認できた。 もう一つは、これまでの研究成果を英語論文にし、国際的なジャーナルへ投稿を行ったことである。義務の不遵守者によって生じた不足分を誰が、どれだけ補うべきかという「肩代わり」問題(slack taking problem)を行為帰結主義と規則帰結主義、そしてスキャンロン的な契約主義の観点から再考し、「契約主義的構成主義contractualist-constructivism」の立場から、デーヴィッド・ミラーやゾフィア・ステンプロウスカとは異なる見解を本稿は支持している。すなわち、肩代わりの義務は「人道的な義務」でも「強制可能な義務」でもなく、「任意の義務」であるという見解である。肩代わりの義務を負うか否かは、遵守者の判断に任されることになるが、その判断が適切なものであったのか否かは、その判断によって影響を被る関係者によって審査されるということを、この見解は提示している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍のため国際学会での研究発表や、海外の研究者との意見交換や調査などを行うことが困難ではあるが、これまでの研究成果を英語論文にまとめ、国際的なジャーナルに投稿することができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、メタ・規範倫理学から応用倫理学へと研究の軸足を移し、公共政策やグローバル・ジャスティス等の諸問題(気候変動、途上国への援助、移民の受入、工場畜産)に契約主義的構成主義のアプローチが有効であるのか、その可能性を探究する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度に予定されていたメルボルン大学での在外研究が新型コロナ禍の影響で中止になったため、大幅に支出が減ることになってしまった。2021年度においても国内外で対面での学会が開催されていないため、出張費の執行ができなかった。そのため次年度以降も、助成金は旅費よりも、物品費に多く費やされると思われる。資料等の収集とPC関係の環境改善に多くを充てたい。
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