従来の研究では芸術の価値を多義的に捉え、芸術史に対しても重層性、多重性を見て取っていたが、そこに通底するような根源的な芸術性を見出すことが、まさに本研究の目的であり、ここに本研究の学術的な意義がある。芸術の価値やその分類はこれまでも問われてきたが、それらをなめすような、基底部に共通の芸術性を考察した研究である。古代ギリシアの芸術制作において模倣概念は重要であるが、これはただ単なる「写し」の意味ではない。芸術は模倣でありつつもそこにジャンル「固有の快」を組み込むことでそれ固有の芸術となる、というアリストテレスの芸術観が、現代の多義化したアートに対してシンプルな芸術性を示唆すると考えられる。
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