研究課題/領域番号 |
19K00039
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
小林 亜津子 北里大学, 一般教育部, 教授 (00383555)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 看護倫理 / 訪問看護 / ケア倫理 / 在宅ケア / 終末期ケア / QOL |
研究実績の概要 |
オランダや北欧諸国などを中心に、訪問看護に関する文献を収集し、訪問看護師が直面する倫理的ジレンマの事例を検討したり、勉強会を行っている訪問看護ステーションの協力を得て、在宅ケア、訪問看護に固有の倫理問題の全体像について考察することができた。 その結果、「病気を診て人を見ない」という病院医療のゆき過ぎたキュアを、ケアの視点でカバーすることが、施設内看護における看護倫理の中核をなしてきたが、在宅ケアでは「病気を診ること」も看護師の仕事になるということ、看護ケアの本質は、単なるケア、ケアリングではなく、医療とケアの媒介であり、それは在宅ケアを担う訪問看護師の役割のなかに明瞭に見て取れることを見出すことができた。 さらに、医療技術とケアの媒介者としての訪問看護師は、近年のケア現場におけるICTやAIケアロボット機器の導入に際して、ハイテクノロジーとヒューマンタッチケアとの媒介を可能にし、技術とケアの両者をコーディネイトしていく役割を担う可能性があることを明らかにすることができた。 上記の研究成果の一部を「訪問看護倫理における技術革新とケア」というタイトルで、ICU哲学研究会において、口頭発表し、技術とケアの媒介者としての訪問看護師像を伝えることができた。 上記の研究成果の一部を、単著『生命倫理のレッスン』のなかに盛り込み、10代、20代の若い世代を中心とした一般の人びとに、現代医療の技術革新と人間性・ケアとの対立、および両者を媒介しコーディネイトすることが生命倫理の役割であることを伝えることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画で予定した通り、研究発表および著書の刊行を通して、施設内看護から生じた「看護倫理」の訪問看護への適用可能性とその限界について、また、技術革新とケアの媒介者としての訪問看護師の倫理的責務について口頭発表することができた。さらに、事例データベースの拡充を図り、すでに科研費のために立ち上げているホームページ上で公開している。
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今後の研究の推進方策 |
北欧やオランダなどの事例を中心に収集、検討してきたが、近年、徐々に書籍化されてきた国内の事例も収集する。また、訪問看護ステーション中心にインタビューをしてきたが、介護事業所へのヒアリングの協力が得られたため、介護職から見た訪問看護師像についての考察を深める。 上記の2点による研究成果を事例データベースの拡充につなげると同時に、「訪問看護倫理」ホームページ上のブログ欄を利用して、一般の人びとにも発信していく。 口頭発表した内容をもとに論文を執筆する。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から、予定していた出張(訪問調査など)が中止になったため。また、購入を予定していた図書の刊行が遅れ、次年度にずれたため。 (使用計画) 購入を予定していた図書が刊行され次第、購入する。また、出張可能な状況になり次第、出張の計画を再検討する。
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