研究課題/領域番号 |
19K00042
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研究機関 | 芝浦工業大学 |
研究代表者 |
櫻木 新 芝浦工業大学, デザイン工学部, 教授 (90582198)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 記憶の哲学 / コーパス調査 / 記憶概念 / アンケート調査 / 集合記憶 |
研究実績の概要 |
2020年度前半は新型コロナ禍のために予定していた計画の大半に延期や変更が生じた。 予定していた7月のグルノーブル・アルプス大学での国際ワークショップは無期限の延期となり、フランス渡航およびそこでの研究発表もキャンセルとなった。これに付随して、渡航の際に予定していた打ち合わせや想定していたアンケート調査の20年度中の実施は見送り、今後の状況を踏まえて時期や方法についての再検討が必要となった。 他方で、概念的な探求や実験の詳細の検討については一定の進展を見ることが出来た。20年度前半から集合的記憶の概念についての国際協同研究に参加し、Zoomやメールで多くの議論を交わした。これによって、記憶概念と表現についての理解を深まっただけでなく、比較方法やアンケート調査の具体的な手続きについて実践的なノウハウを得ることが出来た。さらにプロジェクトの中心人物を2021年度の科研費外国人招へいプログラム(短期)によって東京に招へいすることが決まった。これによって、さらなる国際協同研究の推進とワークショップでのディスカッションなどを通じた本課題への多くのフィードバックが期待できる。 文献研究や資料調査は比較的順調な進展を見ることが出来た。多くの国際研究集会がZoomによるオンライン化し、国際研究集会への参加が容易になったことで、新たな視座を獲得できた。 予定されていた渡航のキャンセルにより、研究発表については学会発表の代替となるウェブ上での資料公開が一件であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前年度に続き(1)哲学・心理学の記憶概念の検討、(2)日英両言語の日常的記憶表現の比較、に加え(3)コーパス調査やアンケート等の実験の着手、および(4)これまでの結果のフィードバックを予定していた。 20年度前半は渡仏、国際ワークショップへの参加を予定していたが、コロナ渦を受けてすべてキャンセルされた。これらは21年度に延期されたまま、詳細な日程は未定である。海外状況の変化により、特に米国で当初対面で実施することを想定していたアンケートについては、実施地域やオンラインへの変更を検討している。 他方で、(1)概念と(2)言語の検討は一定の進展を得ることが出来た。グルノーブル・アルプス大学のKourken Michaelian教授を中心とした研究グループに参加し、集合的記憶に関する日英両言語話者の直観を比較する国際協同研究に取り組むこととなった。これは本研究課題の一部、日英両言語の記憶表現と概念の比較・検討のうち、集合的記憶に焦点をあてるもので、本研究課題の重要な一部を構成する。またZoomで開催された多くの記憶の哲学に関する国際ワークショップ等に参加することで、新しい視点の導入が可能になるなど肯定的な影響もあった。 (3)調査と(4)フィードバックについても、当初考えていた実験準備などを見送ったため、結果として方法の再検討が進んだ。特に上記の国際共同研究の実験準備が20年度中に予備調査まで順調に進み、平行して元々検討していた実験方法へフィードバックを得ることが出来た。日本語大規模コーパスのようなオンラインの調査は比較的に順調な進展した。結果の一部、筑波ウェブコーパス上のデータを用いた日本語記憶動詞の目的の比較は、日本論理哲学会のブログ上に2020年度オンライン研究報告として掲載されている(「エピソード記憶の表現について」)。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は内容の検討に平行して、これまでの研究結果を発表し、フィードバックを得ることが大きなの課題となる。 まず2021年度の前半には、これまでの(1)概念的検討を基に、6月の科学基礎論学会で心理学の記憶概念と哲学の記憶概念の比較に関する講演を予定している。 また、国際共同研究の本実験は2021年度前半に終わることが想定され、21年度中に議論と分析から結果を報告にまとめるプロセスに移ることが期待できる。 2021年度の後半には2020年度にキャンセルされたフランス渡航と、国際ワークショップへの参加を想定している。2020年5月時点で詳細は決定していないが、日仏の状況が改善し次第、他の参加者などを含めて日程が再調整される予定である。これに向けて、国内でのアンケート調査や19年度のコーパスでの調査を踏まえた展開を検討している。 さらに、2021年1月には、科研費の外国人研究者招へいプログラムにより、グルノーブル・アルプス大学教授のMichaelian教授の来日が予定されている。氏の来日に際して本研究課題に関連するワークショップの主催と、そこでの研究報告を計画している。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度に予定していた海外渡航や実験が延期されたため。今年度以降に実施の予定。
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