研究課題/領域番号 |
19K00043
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研究機関 | 東京電機大学 |
研究代表者 |
本郷 均 東京電機大学, 工学部, 教授 (00229246)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 九鬼周造 / 押韻 / 言語 / メルロ=ポンティ / ミシェル・アンリ |
研究実績の概要 |
(1)2019年度は、計画では音楽の哲学・音楽美学の検討を行う予定であったが、ドイツ研究振興会(DFG)より、「日独シンポジウム「翻訳における文化-世界歴史・世界文学・世界社会-トランスカルチャーにおける日本とドイツ、世界の比較」」の分科会「今日の世界文学:異文化間で書く」への参加依頼を戴いたため、本来は、最終年度に予定していた九鬼周造の押韻論についての研究を先行させることにした。 九鬼の押韻論は、一方では言語の「音」の問題であり、他方では押韻における時間性の問題、特に九鬼に特徴的な東洋的時間の概念と偶然論とが交錯する問題領域であること、ここから哲学における言葉がいかにして可能かを問うための一つの地盤があるかもしれない、という見通しを得た。 (2)10日間にわたり、フランス国立図書館において、メルロ=ポンティ遺稿の検討を行ったが、昨年10月より、遺稿の公開方法が、従来のマイクロ・フィルム方式から、すべてGallicaを介したon lineによるものに変更となっていることが判明した。そのため、従来のものとの異動を確認を行い、Gallicaによって公開されていない一本のフィルムがあることを確認し、他のデータ自体には変更が無いことが確認された。ただし、新たに撮り直されたものではなく、マイクロ・フィルムを元にしたデジタル化であると考えられる。そのため、不鮮明な箇所は、依然として残存する。また、著作権の関係上、フランス国立図書館内に設置されたコンピュータ以外からのアクセスはできない。 (3)メルロ=ポンティ『コレージュ・ド・フランス講義録草稿』(みすず書房)の書評を行うことで、メルロ=ポンティ晩年の芸術論と哲学の言語のあり方を再確認し、また、川瀬雅也著『生の現象学とは何か』合評会におけるコメンテータとして参加することで、ミシェル・アンリにおける生と芸術との関係について、新たな視点を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
(1)当初の予定では最終年度に行う予定であった九鬼周造における音韻論の検討が先行したため、実際問題として、どの程度進捗したのかは、やや不明なところがある。 (2)フランス国立図書館での、メルロ=ポンティ遺稿の状況に変化があったため、その確認に時間を取られてしまった。今後の作業に必要な手続きではあるが、本来の研究のための準備作業にすぎないという意味では、やや遅延したと思われる。 (3)年度当初で終了予定であった哲学史教科書の共同執筆が遅延したため、そちらにエフォートをかけることになった。 (4)(1)および(3)のため、2019年度については、論文の執筆ができなかった。(1)については、DFGのHPにおいて発表原稿と資料とを公開する予定とのことで原稿と資料は提出しているが、現在のところ、公開日時は未定のようである。
この4点に基づいて、やや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は、先行した九鬼周造における音韻論の検討を踏まえつつ、音楽の問題と言語の問題との検討を進める予定である。とりわけ、メルロ=ポンティ晩年の肉の哲学を、直結するものではないにせよ、音楽の哲学との関連において考察する方向を探りたいと考えている。その方向性としては、この問題の結節点に、九鬼の押韻論があるのではないかという見通しのもとに、進めてみたいと考えている。
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