研究課題/領域番号 |
19K00043
|
研究機関 | 東京電機大学 |
研究代表者 |
本郷 均 東京電機大学, 工学部, 教授 (00229246)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | メルロ=ポンティ / 存在論 / 音楽 / 芸術作品 / アンリ |
研究実績の概要 |
本年度は、まず、当初の計画に示したテーマのひとつ、すなわち、メルロ=ポンティが「存在の渦」を象るにすぎないとした「音楽」の存在論の可能性を探究し、彼が示唆したにとどまる存在の運動性の具体的な意味に迫ることを一つの目的とした。 論文「メルロ=ポンティの存在論における音楽の位置」では、メルロ=ポンティのテキストにおける音楽の位置づけが初期から晩年にかけて微妙に変化していることを確認し、それが従来解釈されていたような消極的ないしネガティブなものでは決してなく、むしろ積極的に意味づけることができるものであることを確認した。 また、過去の成果において、アンリの芸術論における絵画、特にカンディンスキーの抽象絵画の位置づけについて検討し、むしろ「音楽」の方がアンリの考察には適した素材ではないかという課題を得ている。 「「プロト現象学」と「生の現象学」のはざまにて」では、これと関連して、アンリの哲学のうちに、フッサールおよびメルロ=ポンティの言う「感性的世界のロゴス」が働きうるかどうか、川瀬雅也氏の『生の現象学とは何か』の読解・批評を通じて検討した。この結果からは、アンリの哲学における言語論の不在と思われる事態と、音楽が問題化されていないことが、「感性的世界のロゴス」との関連において考察しうるという見通しを得た。 以上の2点の成果から、芸術作品における人間の立場の問題、音楽と情感性の問題、そしてアンリの情感性の哲学がメルロ=ポンティの存在論における音楽の位置づけと通底しうるものがあること、これを確認し、さらなる問題として取りだすことができた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
covid-19により、授業に対するエフォートが、前期中は100%近くにまでなってしまったこと、予定されていた学術大会での発表が大会そのものの中止により行えなかったこと、さらには渡仏しての研究が行えなかったことが主たる原因である。
|
今後の研究の推進方策 |
covid-19の状況次第であるが、可能であれば渡仏して資料研究を行い、研究の基礎的な場面を固めることを図りたい。 また、音楽と情感性の関係および情感性と言語の関係について、ミシェル・アンリの哲学との関係なども踏まえて研究をすすめる。 さらに、音楽の象りと現れが、ジャンケレヴィッチの「ほとんど無」の閾においてどのように考えられるかについて、比較見当を行う。 これらを通じて、メルロ=ポンティにおける芸術作品(音楽も含む)と人間との関係を、ハイデガーの『芸術作品の根源』などの再検討を通じて明らかにし、「肉」の存在論・芸術・言語の相互関係の探究をさらに進めていく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
covid-19のため、計画していた渡仏しての研究、学会出張などがすべて取りやめになったためである。
|