本年度は最終年度として、これまでの成果を総括する方向での研究を続行した。なお、今年度においても、covid-19の影響を鑑みて渡仏は控えたため、当初目的としていた遺稿研究に関しては実施出来なかった。 (1)2022年9月2日(土)、龍谷大学にて開催された「メルロ=ポンティサークル第28回研究大会」にて、シンポジウム「自己 身体 芸術 メルロ=ポンティとアンリ」を企画・立案し、川瀬雅也先生(神戸女子大学)、村瀬鋼先生(成城大学)と共に、「芸術をめぐって」として提題を行った。この提題に基づく論文を現在作成中であり、2023年度内に発表する予定である。 (2)2022年11月に、ミネルヴァ書房より『新しく学ぶ西洋哲学史』を、荻野弘之先生(上智大学)など5人で分担執筆し刊行した。申請者は、「第Ⅳ部 現代の哲学」第16章~第18章を担当し、本研究の成果の一部を発表した。 (3)放送大学での2023年度よりの新規科目『現代に生きる現象学』の印刷教材(2023年3月刊行)および放送教材を、榊原哲也先生(東京女子大学)、西村ユミ先生(東京都立大学)と共に作成した。申請者は、第5章~第9章(放送教材では第5回~第9回)を担当し、本研究の成果の一部を発表した。 (4)2023年3月に、科学研究費補助金による研究報告書として、「メルロ=ポンティにおける芸術と存在論について」を作成し、関係各所に配付した。 以上の研究を通じて、本研究が所期の目的の一つとしていたメルロ=ポンティにおける音楽の存在論的意味については明確にすることが出来た。しかしもう一つのテーマである音楽と言語との関係に関する問題は、探究が不十分なまま残ってしまった点が、反省点である。
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