本研究によって、メルロ=ポンティの芸術論における「音楽」の位置づけが、積極的な意味を持っていることを明らかに出来た。とりわけ、プルースト『失われた時をもとめて』に記されている「小楽節」に関わる記述の中で、音楽のイデア的性格に基づいて、音楽と音楽の演奏者との関係を描いており、その点からメルロ=ポンティはその記述をそのまま受け取るわけではないが、大きな刺戟を受けている。 また、音楽が「存在の渦を象る」ことのできる場面は、同時に言葉が言葉として意味を持つことになる場面でもあることを明らかにし、根本的には言葉が意味を持つとはどのようなことかを明らかに出来た。
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