本研究の目的は、非対称戦争においてドローン兵器を使用することの道徳的是非を、〈必要性〉に照らし合わせて分析・評価することである。令和4年度は、交戦能力の顕著な格差をもたらす今日の技術革新が、〈必要性〉の観点から道徳的にどう評価されるかを論証する研究を継続した。具体的には、兵器としてのドローンがもつ特徴を概観したうえで、それが既存の戦争倫理と照らし合わせてどのような問題の再検討を迫っているかを、その技術的特性、交戦者の非対称性といった点から検討した。その成果の一端として、「ウクライナ戦争と平和主義のゆくえ」『世界』964号(2022年11月)、201-210頁、「『反攻の象徴』としてのドローンと戦争倫理」『自由思想』166号(2022年11月)、20-24頁を公刊した。 研究期間全体の実績としては、以下の点が挙げられる。1)次悪の追求を本質とする〈必要性〉の考慮は、正戦論者とリアリストにとって共通の道徳的基盤となっていることを確認した。2)非対称戦争のもつ構造的側面を注視してもなお、〈必要性〉の観念から〈区別〉原理に根本的な変更を加える決定的な理由は見出せないことを明らかにした。3)捕獲や投降、その他の無力化により、攻撃者が不必要な殺傷を避けつつ当初目標を達成する余地も広がることで、交戦者間の徹底的な非対称性は戦闘行為そのものの〈必要性〉を変化させることを論証した。
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