研究課題/領域番号 |
19K00048
|
研究機関 | 京都薬科大学 |
研究代表者 |
坂本 尚志 京都薬科大学, 薬学部, 准教授 (60635142)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 分析手帖 / マルクス=レーニン主義手帖 / 概念の哲学 / 主体の哲学 / 学知 / 高等師範学校 |
研究実績の概要 |
本研究は、20世紀のフランス思想の発展を、「主体の哲学」と「概念の哲学」の対立と、マルクス主義的な政治実践との関係という二つの参照軸によって理解することを試みるものである。特に「概念の哲学」の目的である「学知la science」の探究と、マルクス主義の最終目的である「革命」の関係がいかなるものであるかを、『分析手帖』と『マルクス=レーニン主義手帖』という、68年5月直前の時期に高等師範学校生が刊行した二つの雑誌を出発点に理解することを目的としている。 二つの『手帖』の関係を理解する手がかりとして、本年度は両者に共通するテーマである文学とその位置づけに関して『フランス語フランス文学研究』誌にて査読論文を公刊した。文学の分析という場において、『分析手帖』はテクストの内在的分析を行う一方、『マルクス=レーニン主義手帖』はイデオロギーとの関連において文学を理解しようとしている。こうした対立軸について、『分析手帖』と『マルクス=レーニン主義手帖』の生まれた歴史的背景にも言及し、本研究の位置づけならびに意義を明らかにすることができた。 研究のさらなる進展のためには、フランスにおける史料調査が必要であったため、2019年9月には、『マルクス=レーニン主義手帖』ならびにその発行母体である共産主義青年同盟関連史料が所蔵されている現代世界図書館・文書館・博物館(パリ第10大学)にて調査を行った。その結果、共産主義青年同盟の活動や、『分析手帖』と『マルクス=レーニン主義手帖』の関係についてこれまで知られていない事実を明らかにすると考えられる史料を多数発見することができた。さらに、60年代後半のフランスの思想状況に関する先行研究についても多くの知見を得ることができ、『分析手帖』と『マルクス=レーニン主義手帖』の関係についてより複眼的に考察できる素地を整えることができた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで明らかになってきたことを査読論文として公刊できたことが、進捗状況を「おおむね順調」とする大きな理由である。また、史料収集についても円滑に行うことができ、次年度以降の分析を進めるための環境を十分に整えることができた。
|
今後の研究の推進方策 |
今後の本研究の推進のために、現在収集済みの史料の読解、分析を進めていくことを基本とする。研究計画においては2020年度には高等師範学校、フランス国立図書館等での調査を予定していたものの、昨今の新型コロナウイルス感染症の流行拡大等の影響で実施が困難であると考えられるため、昨年度までに収集した史料ならびに入手可能な公刊史料の分析を先行して進めることで、研究を進めていくことを予定している。 また、それと並行して、論文、研究ノート、口頭発表等によって段階的に成果を発表していくことも予定している。
|
次年度使用額が生じた理由 |
史料調査において執行予定であった複写・印刷費(その他)については、史料の写真撮影が史料の保存状況に鑑みて許可されたため不要となったこと、また、成果発表のために計上していた国内学会参加旅費について、当該年度は別経費にて参加あるいは不参加であったため、該当する予算を次年度使用とした。 また、2019年度末のCOVID-19流行に伴い、予定していた物品ならびに図書購入等を次年度に行うこととし、これによっても次年度使用額が発生した。
|