研究課題/領域番号 |
19K00048
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研究機関 | 京都薬科大学 |
研究代表者 |
坂本 尚志 京都薬科大学, 薬学部, 准教授 (60635142)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 分析手帖 / マルクス=レーニン主義手帖 / 概念の哲学 / フーコー / カンギレム |
研究実績の概要 |
1960年代フランスの「概念の哲学」の潮流における「学知」と「革命」の影響を考察することを目的とする本研究は、『分析手帖』と『マルクス=レーニン主義手帖』という2つの雑誌を主要な分析対象としている。しかしながらこのような対象の限定は、両者の関係にのみ着目するだけでなく、それをより広い思想史的文脈に位置づけることをも必要としている。 こうした観点から考えるならば、本年度の研究はフーコー、カンギレムといった、『分析手帖』と『マルクス=レーニン主義手帖』に関わった高等師範学校生たちが影響を受けた思想史のアクターにおける「学知」と「革命」あるいは政治的なものとの関係を明らかにする作業を中心として行われたと言える。 具体的な成果としては、フーコーにおけるセクシュアリテ、フィクション、病気と他性の概念に関する論考、カンギレムとフーコーにおける規範の政治的・生命的次元での関係の分析等があげられる。これらの成果によって、本研究が対象とする1960年代のフランスにおける「概念の哲学」の発展がより立体的に把握されることとなった。 また、本年度の研究の遂行過程において、エピステモロジーならびに精神分析における政治的なものの位置を解明することが不可欠な課題であることが明確になった。主にカンギレムとラカンを通してこれらの課題に解答することを目指して資料収集・分析に着手した。これらの成果は論文や翻訳(ならびのその解題)等の形式で公刊予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究実績の概要に示した通り、『分析手帖』と『マルクス=レーニン主義手帖』が1960年代において代表していた「学知」と「革命」の交錯した関係を理解するためには、2つの作業が必要である。 第一に、「学知」と「革命」の交差という視点からの同時代思想の把握であり、こうした作業について、本年度はフーコーならびにカンギレムの思想を中心に進展を見た。 第二の作業は、未公刊資料に基づいた分析である。本年度に関しては、新型コロナウイルス感染症の影響で海外調査を実施することができず、当初予定とは異なり来年度に集中的な調査を実施することが必要となっている。 以上のような事情のため、「やや遅れている」とすることが適切であると考える。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウイルス感染症拡大の鎮静化が見込まれる場合は、再度現代世界図書館・文書館・博物館(パリ第10大学)において、主に1960年代末のマオイストに関連した史料を収集する予定である。 また、「学知」と「革命」の問題を考える際に不可欠である規範の問題について、主にカンギレムのテクストの読解や、それに関する研究の翻訳・解題を通じて考察を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の世界的流行により、予定していた海外調査を実施することができなかったことが、次年度使用額の大半を占めている。 次年度使用額については、当該年度使用額と合わせて、海外調査のために使用するとともに、研究成果の公刊に係る費用としても使用する予定である。
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