気候変動に関する思想研究が、人文学と社会科学の最新の潮流をつなぐ結節点として機能していることを文献研究と現地調査を通じて明らかにした。具体的な意義と重要性は、(1)採取主義批判を日本に本格紹介する役割を果たしたこと、(2)急進的な気候運動の実践が、非暴力直接行動や市民的不服従の歴史と現在を活性化させ、歴史学、社会学、哲学などにおける抵抗、実力闘争、暴力、権力といった主題群の再評価につながっていることを示したこと、(3)哲学思想分野において気候変動の研究が進んでいない日本において、統治論や生政治論といった社会哲学的な概念を援用しつつ、気候変動が当該分野の喫緊の課題であることを示したことである。
|