昨年度まで継続していた題跋の解読については、泉屋博古館所蔵作品について、2021年6月6日、9月12日、11月14日、2022年1月23日の研究会にて、張瑞図「山水書画巻」呉歴「秋景山水図巻」の跋文を会読した。また東京国立博物館所蔵作品について、2021年4月17日、5月23日、6月20日、7月31日、9月26日、10月31日、11月21日、12月26日、2022年1月30日、2月20日、3月20日の研究会にて、「定武蘭亭序(呉炳本)」ならびに禹之鼎「城南雅集図巻」の跋文を会読した。(すべてZoomによる。)なお、それぞれの研究会ではあわせて内藤湖南の画跋(湖南文存巻八)についても、現在の所在状況、影印本の存在などを確認しつつ、作品と照らし合わせながら会読を行った。また、個人研究の成果として、「風景描写の意味」という論文にまとめた。これは、中国詩の風景描写は、従来、詩人の心情となんらかの対応関係にあると考えられていたのに対して、杜甫の詩を例として、これまで杜甫の心情との関係が希薄であると見なされた詩があることをうまく説明が出来ていなかった状況について、その風景表現が、詩人の持っている感情を増幅させる作用を持っていることを明らかにしたものであり、さらにその後の蘇東坡を含めた題画詩の展開に新たな展望を示したものである。これについては、汲古書院から2022年度内に刊行予定の、中国美術研究会のメンバーによる論文集(題名未定)に既に投稿済みである。
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