研究課題/領域番号 |
19K00058
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研究機関 | 愛知県立大学 |
研究代表者 |
川尻 文彦 愛知県立大学, 外国語学部, 教授 (20299001)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 中国近代思想 / 西洋 / 梁啓超 / 李大釗 / 徳富蘇峰 / 福澤諭吉 / 中国共産党 |
研究実績の概要 |
2021年度内に公刊できたものとして、著書(単著)は『清末思想研究ーー東西文明が交錯する思想空間』2022年1月、汲古書院、496頁、定価13200円、著書(共著)としては、孫安石・大里浩秋編『明治から昭和の中国人日本留学の諸相』のうち「正則英語学校と中国人留学生ーー上海での教科書裁判も紹介する」2022年3月、東方書店、91頁-115頁、中西輝政編『文明と覇権から見る中国』(シリーズ日本人のための文明学 第1巻)のうち「近代中国の知識人たちは「文明」をどのように捉えたのか」2022年2月、ウェッジ(JR東海)、3-32頁、黄俊傑・安藤隆穂編『東亜思想交流史中的脈絡性転換』のうち「梁啓超「東学」的重探ー-是福澤諭吉?還是徳富蘇峰?」2022年1月、国立台湾大学人文社会高等研究院、257-284頁がある。論文(単著)としては、「日本留学時期の李大釗ーー年譜的考察」2022年3月、『愛知県立大学国際文化研究科論集』第23号、1~20頁と「李大釗「青春」考」2021年10月、『日本研究』2021年第3期、総第178期、遼寧大学日本研究所、1~10頁がある。いずれも本研究課題である東西文明が交錯する場として中国近代思想を研究対象として扱ったものである。本研究課題の研究の深化に寄与するところがあったのではと考える。中国共産党の創立者の一人である李大釗についても近年研究を進めている。広い意味で本研究課題のテーマである東西文明論的な立場から、すなわち明治日本の社会主義思想や当時の国際的な社会主義思潮(いわゆる初期社会主義)を手がかりにしながら、1920年代初頭の中国共産党について迫っていきたいと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
辜鴻銘の東西文明論をより広い視野から解明したいというのが本研究課題の目的である。しかし、辜鴻銘の残した思想文献のみを研究対象にしては、辜鴻銘思想の解明にはつながらないのではと考えた。そのため迂遠ではあるが、より広く視野を広げ、西洋文明と中国文明の比較論の立場をとり、また時期的には清末時期にまでさかのぼり、そして「東学」といえれる明治日本における西洋文明(西洋学問、学術)までも研究対象にした。辜鴻銘を手がかりにしながら、大規模な戦線拡大をはかることになった。その成果の一つが、汲古書院より2022年1月に刊行することができた『清末思想研究ー-東西文明が交錯する思想空間』(単著)である。本書の刊行により今後、研究を進めるうえでの土台ができたと考えている。この土台の上に立ってさらなる研究を進めていく。
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今後の研究の推進方策 |
辜鴻銘が北京大学教授職にあった時には、新文化運動が起こり、マルクス主義が中国にもたらされ、また新文化に対抗した復古的な思潮が起こったりした。保守から革新に至るまで「百家争鳴」的な思想状況にあったといえる。また第一次世界大戦後の「西洋の没落」やロシア革命が中国の思想界に与えた影響は大きい。辜鴻銘をはじめとした東西文明論はそのようは思想的な背景をもっていたことに注意する必要がある。今後の研究方向としては、本研究課題で示した問題意識をもとにしながら、より具体的な実証研究を推し進めていくことに専念する。中国に最も影響を与えた西洋文明(西洋思想)であるマルクス主義についても、日本との思想的な連鎖やマルクス主義思想の「中国化」といった観点から引き続き研究関心を寄せていきたいと考えている。
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