研究課題/領域番号 |
19K00062
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研究機関 | 大正大学 |
研究代表者 |
倉西 憲一 大正大学, 仏教学部, 専任講師 (90573709)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 学知基盤形成 / インド仏教最後期 / ヴィブーティチャンドラ / アバヤーカラグプタ学統 / ウドゥヨータ / ラトナラクシタ / パドミニー |
研究実績の概要 |
当該科研プロジェクトは、インド仏教衰退が顕著になった12世紀、いわゆるインド仏教最後期に焦点を当てて、その時期に活躍した学僧たちの著作に見る文証としての引用に基づき、彼らの知識基盤の形成と展開を解明することを目的としている。特に、インド仏教最後期に活躍したアバヤーカラグプタとその弟子筋の学統を研究対象としている。昨年度(初年度)はアバヤーカラグプタの孫弟子にあたるヴィブーティチャンドラの著作『ウドゥヨータ』の校訂テクスト作成のための下準備をおこなった。今年度(二年目)は本格的な校訂作業に入り、同時に翻訳(英訳)をはじめた。全体の40%の仮校訂テクストおよび試訳が終わっている。ただし、今年度に予定していたハンブルグ大学のハルナガ・アイザックソン教授をはじめとする研究者たちとの同テクストに関する研究会が、コロナ禍により中止となったので、その研究会で予定していた校訂テクストと試訳のファイナライズが未完了となっている。 さらに、今年度はヴィブーティチャンドラと同じ時期に活躍したラトナラクシタの著した『パドミニー』第12章および第19章の研究にも従事した。まず、第12章は、インド後期密教の中で使用されていた数珠と関連する念誦法が説かれている。そして、第19章は「死の兆候および死を欺く修法」について説かれており、これは、大正大学綜合仏教研究所の講師であるバン・ジョンラン博士との共同研究である。それぞれ論文として公刊している。これらは、インド仏教最後期における学僧たちの知識基盤の一つの資料である。こうした資料を蒐集し、蓄積することは、当時の仏教の実際を明らかにすることとなる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当該科研プロジェクトの主たる対象である『ウドゥヨータ』の校訂テクストおよび試訳は全体の40%終了している。しかしながら、コロナ禍の中で予定していた専門家との研究会が思うように開催できず、校訂テクストと試訳のファイナライズが出来ていない。Zoomなどのオンライン会議の開催も考慮したが、他の科研プロジェクトとの日程調整がうまくいかず、当該科研プロジェクトの研究会は充分におこなうことが出来なかった。こうした事情から、やや遅れていると言わざるを得ない。
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今後の研究の推進方策 |
当該科研プロジェクトの最終年度は、二年目に出来なかった研究会を開催し、完成した『ウドゥヨータ』の校訂テクストおよび試訳のファイナライズをする。また、インド仏教最後期の学僧たちの著作の研究作業も同時におこなっていく。そして、著作内に文証として引用されている文献や文章を精査し、当時の知識基盤を浮き彫りにすることを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により、計画していたドイツハンブルグ大学での研究会が開催できず、旅費および謝金、さらに関連する物品費も支出できなかったことが次年度使用額が生じた要因である。最終年度に持ち越した助成金は、海外渡航可能になれば、ハンブルグ大学へ赴き、研究会を開催することになり、その際の旅費や謝金に充当する。しかし、もし、コロナ禍の状況により、海外渡航できない場合は、オンラインでの研究会を頻繁に開催し、都度、参加研究者に謝金を支払う。
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