研究課題/領域番号 |
19K00065
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研究機関 | 創価大学 |
研究代表者 |
菅野 博史 創価大学, 文学部, 教授 (50204805)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 『大般涅槃経集解』 / 智顗 / 吉蔵 / 廬山慧遠 / 鳩摩羅什 / 僧肇 |
研究実績の概要 |
研究課題である「中国南朝仏教における空と有の対決と超克―『大般涅槃経集解』を中心として―」示されているように、基本テキストである、公益財団法人白鶴美術館に所蔵される『大般涅槃経集解』全71巻のうち、60巻までの写真を入手した。残りの11巻についても、写真撮影は終わったが、その写真家が急逝されたために、写真そのものはまだ入手するに至っていない。ただし、すでに入手した写真の一部と『大日本続蔵経』の所収本との文字の異同について、中国の研究者の協力をいただきながら、校訂の作業を進めている。 また、『涅槃経』の思想の研究の側面については、日本印度学仏教学会において、「中国天台宗における涅槃経観を示す諸概念について―「追説」、「追泯」、「〓(手+君)拾教」、「扶律談常」」という題の口頭発表を行った。これを論文とした中国天台宗における涅槃経観を示す諸概念について―「追説」、「追泯」、「〓(手+君)拾教」、「扶律談常」『印度学仏教学研究』70-1,2021.12,pp. 337-330[L])を公開した。 さらに、研究課題である「中国南朝仏教における空と有の対決と超克」に関連して、東方学会秋季大会において、「儒・道二教と仏教―三教交渉を再考する」というシンポジウムのなかで、「六朝仏教における空と有の問題―廬山慧遠とその周辺を中心として―」と題する研究発表をした。これは晋宋時代に生じた中国仏教思想史における「般若性空」から「涅槃妙有」への大きな転換について紹介するもので、中身としては、廬山慧遠の「法性」についての捉え方を紹介し、次に僧肇の『不真空論』に紹介される鳩摩羅什以前に流行した般若空思想に対する心無義、即色義、本無義という三種の解釈を紹介した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
『大般涅槃経集解』全71巻のうち、60巻の写真をすでに入手したが、残りの11巻を撮影した写真家の急逝により、まだその部分を入手していない。テキストの校訂については、中国の研究者との協力のもとに進めているが、まだ発表には至っていない。 コロナ禍のために、海外の出張、国内の出張、ともにまったく出来なかったために、海外での研究発表や国内外の専門家からの知識の提供などを受ける機会が少なかった。私が出張できないだけでなく、中国の研究者も来日できないので、作業の相談など少し滞っている。 しかし、研究課題と密接に関係する『涅槃経』の思想や六朝仏教における空と有の問題について、全国学会において、口頭発表や論文の発表ができたことは良かったと思っている。
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今後の研究の推進方策 |
すでに述べたように、『大般涅槃経集解』の残りの11巻の写真が急逝された写真家のご遺族から提供していただくことが困難な場合は、改めて白鶴美術館と別の写真家との協力のもとで進めたい。 中国の研究者の協力を得ながら、テキストの校訂について、一部でも公刊を目指している。 『大般涅槃経集解』について、日本印度学仏教学会において口頭発表をするとともに、論文を公刊することを計画している。 『涅槃経』の中国における受容や『涅槃経』の註釈書の研究について、英文の論文を刊行準備中である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度は、コロナ禍のために、海外出張や国内出張がまったくできなかった。また、構内への立ち入りもかなり制限されたために、研究補助のアルバイト人員を雇用することもできなかった。そのため、経費の消化が十分ではなかった。 2022年度は、可能であれば、海外の学会において研究発表することや、海外の学者との交流、国内の写本調査のための出張、国内の学会発表、国内各地におけるワークショップの開催などによって、経費を消化する予定である。 また、必要な書籍、資料、パソコンの周辺機器などを購入する予定である。
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