研究課題/領域番号 |
19K00066
|
研究機関 | 国際仏教学大学院大学 |
研究代表者 |
堀 伸一郎 国際仏教学大学院大学, 国際仏教学研究所, 研究員 (60339778)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | サンスクリット写本 / 写本識語 / 東インド中世史 / ヴァルマン朝 / パーラ朝 / 後期インド仏教史 / インド暦 / 東インド写本 |
研究実績の概要 |
東インドで作成されたPancavimsatisahasrika Prajnaparamita (『二万五千頌般若経』)サンスクリット写本について、日本印度学仏教学会第71回学術大会で口頭発表を行い、論文を刊行した。識語には、11-12世紀に東ベンガルを支配したヴァルマン朝のハリヴァルマン王在位第8年の日付が明記される。日付の記述には、tithi(インドの太陰太陽暦で月の満ち欠けに基づく日付)のほか、曜日、ナクシャトラ(星宿)、さらに太陽日と考えられる第2の日付が含まれているため、インド暦西暦換算コンピューター・プログラムpancangaを応用することにより、西暦1089年10月3日水曜日に筆写完了したことが確定した。前年度、パーラ朝ラーマパーラ王第39年作成Pancaraksa写本の筆写完了日を特定する論文を発表したのに続き、東インド中世史研究において基準となる暦年代を与えることとなった。当該写本の章末コロフォンでは題名がMahati Prajnaparamita (大般若波羅蜜多)となっており、章構成(ネパール伝本に欠ける最終4章を含む)や章・テキストの順序等、本文自体も従来知られているサンスクリット・テキスト(ネパール写本とギルギット写本)とかなり異なっている。本写本は非常に多くの細密画を含んでいるため、従来インド美術史研究者の注目を集めてきたが、現時点で東インドで作成されたことが確認できる唯一の『二万五千頌般若経』サンスクリット写本として文献学的にも極めて重要な写本であることが明らかとなった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
COVID-19の世界的感染拡大による渡航制限のため、2020年度に予定していた海外調査は実現できなかった。写本所蔵機関にメールで照会しデジタル画像を入手することを試みたが、図書館・博物館の閉鎖等の影響でうまくいかないケースが多かった。マギル大学図書館から彩飾写本のデジタル画像を入手できたのは貴重な成功例である。
|
今後の研究の推進方策 |
COVID-19の世界的感染拡大のため、2020年度に参加・発表を予定していた二つの国際学会がいずれも2021年度以降に延期された。海外調査が実現できるまでは、所蔵機関にメールで照会し、写本の撮影を依頼し、デジタル画像などを入手したうえで研究を進め、状況が改善し次第、実見調査を実施する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19の世界的感染拡大により、2020年度に参加・発表を予定していた二つの国際学会がいずれも2021年度以降に延期され、2020年度に予定していた海外のサンスクリット写本所蔵機関での実見調査も実現できなかったため、次年度使用額が生じた。海外調査を次年度以降に延期し、それに伴って生じる旅費も次年度以降に使用する予定である。
|